食い気より色気カメラを向けられていることに気付いた時には大きく口を開けてしまっていて、まあいいかとクロノはそのまま熱々の肉まんにかぶりついた。元々細かいことは気にしないタイプだし、何より今は冷めないうちに肉まんを食べたい食欲が勝っていたのである。寒い冬と言えばやっぱり買い食いの肉まんじゃと最初に教えてくれたのはアカバである。疲労と空腹でくたくたになっている中食べる肉まんとはこうも美味いものかと感動して以来、任務の帰りに本部近くのコンビニに寄り道をして肉まんを買うのがちょっとしたマイブームになっている。ふわふわもちもちでほんのり甘い皮、そして中から現れる、ジューシーで食べ応えのある餡。筍と玉ねぎが混ぜ込まれているのか、シャキシャキした食感が楽しい。そして何より、手が悴みそうなほど寒い日に食べる肉まんのなんと美味しいことか。まるでホッカイロのように、掌を温めてくれる。その上腹と心まで満たされるのだからすごい食べ物だ。
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