春待ち(続きを書く!)11 :
「オマエが過去を捨てる覚悟があるんならそいつを解放してやろうじゃねえか」
この国で起こる凶悪と肩書のつく犯罪の背後には必ずといっていいほど関わりをチラつかせる犯罪組織「梵天」。その組織の相談役という肩書を持つ男の言葉が果たしてどれほどまでに信用できるものなのか。龍宮寺は目の前のソファに深く座る男の顔を睨みつけた。
両手をひとまとめに後ろ手に捕らえられ、コンクリの床に乱暴に投げ出された。床にこすった頬を拾われて、顎を掴まれ、力任せに顔を持ち上げられた。猿轡を噛まされた口元に自由はない。ふうふうと荒い呼吸がせいぜいだ。流した血液が眼球に滲んで視界が霞む。
皮張りのソファにどかりと腰を下ろして値踏みするような目を向ける男の顔には特徴的な大きな傷。やつれ険のある眼差しは記憶にあるそれとは大きく異なってはいたが、龍宮寺がそれに驚くことはない。
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