恐怖と好奇心のパラドックス「アンタって、売られたらいくらぐらいの価値があるんスかね」
そう目の前の小さな体に告げれば一瞬で瞳を曇らせる。手を伸ばせば届くぐらいの距離にいるのに心はものすごい勢いで離れていっただろう。それでいい。
人は自分の知らないものに出会った時にだいたい二つの感情を抱きやすいという。一つは恐怖。もう一つは好奇心だ。この二つは異なる性質なくせに隣に寄り添うように共存するのだ。
目の前の女の子が現れたのは突然だった。異質な存在は瞬く間に学園中に知れ渡り学年も寮も違うオレの耳にまで届いた。それでも特に関わることはないだろうと思っていたのに、レオナさんのオーバーブロットの件で関わることになり、他人から顔見知り、そのまま気さくな先輩と彼女の中で変わっていったのだろう。会えば挨拶されるし立ち話ぐらいはするようになっていた。
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