一緒にお風呂に入りたいラギ監シリーズ15今年も残すところあとわずか。
世の人たちは年越しに備えて、思い思いに過ごしている。
そんな中、オレ、ラギー・ブッチは、マジフトの試合に出場していた。
「さぁ!今年の試合納め!夢のチームによる夢の対決、まもなく始まります!!」
試合直前の大歓声。
いつもなら気合いもテンションも上がる…ところなんスけど。
オレにはちょっと心配なことがあった。
それは愛しいオレの番であるユウくんと。
…そのお腹にいるチビどものことだ。
オレが試合に参加することになったのは、数日前。
練習の後、リーダーに呼ばれ、何かと思えば。
「年末に行われる試合、出てみないか?」
年末に行われる試合といえば、ドリームチーム対決。
チームの垣根もなく、新人もベテランも関係ない。
ファンの投票で選ばれる、夢のチームでの対決。
まさかそれに…オレが選ばれるなんて、それこそ夢にも思ってなかった。
リーダーが差し出した紙をみると、有名な選手の名前がずらりと並んでいる中に…オレの名前があった。
何度も目をこすって、何度確かめても…オレの名前だった。
「わーっ!!すごい!すごいじゃないですか!」
すぐに返事をかえすことができず、一旦持ち帰りユウくんに伝える。
聞いた途端にぱあっと目を輝かせて喜んでくれた。
いつものことッスけど、ぶんぶん振り切れているしっぽが見えそうだ。
「あぁ…でも…。」
ちらりとユウくんのお腹を見る。
実は今、ユウくんのお腹にはオレとの子どもがいる。
だから年末はユウくんとゆっくり過ごすつもりだった。
目を離すと転びそうだし、少しずつお腹が大きくなってんのに…無茶するし。
それに、ユウくんと二人っきりで過ごせるのは今年限り。来年からはにぎやかになるだろう…と思うと。
選ばれたのはもちろん嬉しいけど、丁重にお断りするべきかと考えていた。
けど、そんな考えはすぐに打ち砕かれる。
「試合、この子たちと一緒に見ますね。」
「…!!!」
片手をお腹にあてて、それはもう幸せそうに笑うユウくんを見ていたら。
断ろう、なんて思っていた自分がバカみたいに思えてきた。
これは…とーちゃんがんばるぞー!ってやつッスかね。
「応援、よろしくッス!」
「はい!もちろんです!!…あ。」
「??」
何かあったのか、ユウくんが急に動きを止める。
しばらくしてから、またふわっと笑った。
「今、お腹を蹴りましたよ!ふふっ、お父さんの試合、楽しみなのかも。」
「シシシッ。それは…。」
絶対、負けられないッスね…!
「さぁ、ラギー・ブッチ選手!今日も華麗なディスクさばきを見せてくれるのか?!」
いつぞやのやりとりを思い出して、深呼吸をひとつ。
すると、さっきまでの憂うつな気持ちはどこかへ吹っ飛んでいった。
気合いを入れ直し、歓声と胸の高鳴りを味方にして試合へと向かった結果、調子は上々!
…むしろ良すぎて、チームが勝っただけでなく、MVPに選ばれてしまった。
光栄ではあったけれど…ユウくんたちを待たせる結果になっちまった。
まぁ、それもまた、あのかわいい笑顔をみたら、吹き飛んじまうんスけど。