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    1YU77

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    1YU77

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    な~すえんや
    無知なので雰囲気な~す現場とやぃしず
    退院したてのわたしはすべての医療関係者様に感謝いっぱいの気持ちです。

    な~すえんや無知なのですべて雰囲気と心の目で補完おねがいします♡
    看護しずまくんと病気のもぶくんとやぃせんせい




       







         





     AIの如くさらさらと説明をしているのは能面のような冷めた顔をしている。
    「説明は以上ですが、何かご質問ありますか」
     淡々と話す主治医を恨めしく見上げた。
     先生の血は何色ですかぁ。先生に血はかよっていますかぁ。
     純粋な問いを飲み込み、刃物の如く鋭い眼光におずおず口を開く。
     白衣の鬼は決して目をそらさない。いつもこうだ。
     医者はだいたい患者の横向きに対面して緊張解すんじゃないのか。
     あなたは何故ド正面からじっとこっちを睨みつけるんだ。
     八木先生よ。
    「あ、あの……どれくらいで退院てできますかね」
     恐る恐る聞く。恐れられている時点でお前はやぶ医者だこの野郎。
     その辺の悪口はぐっと飲み込む。
    「そうですね、予後よければ一週間以内には。茂武さんの体調に合わせて決めましょう」
     八木先生はPC画面で俺の断面図を見てふんふんとまたこっちを向いた。
    「はあ、あの、なかなかよくならないこととかあるんですか……入院長くなったり……」
    「はい、あります。患者さんそれぞれで違いますので」
     こっちは不安で聞いているのに八木は即答する。切り捨てるような迷いもない答えに、わかっていることとはいえ心がめそつく。なんだこいつ患者に寄り添う心ゼロ。
    「ああ、…そう、ですよね」
    「他には?」
     挙句の果てにこの追い打ち。しかも相変わらずほとんど視線も外さない上、笑いもしない。
    「ええ、いや……」
    「はい、じゃあ明後日お願いします。頑張りましょう」
     追い出すように挨拶をされ肩を落とし点滴スタンドを杖のごとく連れ添う。
     なにあいつう……。
     茂武は主治医の八木先生が大変苦手であった。
     愛想なしすぎ。表情ほぼなし。威圧感あり。
     しかし腕は確かで信頼できるのだと小さな病院からここを紹介された。
     チェンジできますかと聞きたいくらいだがそんなことができるはずもない。
     手術を控えているし。まだこの先生のことは何もわからない。
     ただシンプルに恐い、感じ良くない、のみ。
     これだいぶ悪くない?と思うが悪いところを治してくれるならまあいいかとも思う。
    「ああ、じゃ、その、先生よろしくお願いします、」
    「はい、よろしくお願いします」
     八木先生は淡々と、やっぱりじっとこっちを見たままそう答えた。


     がららら。と扉が閉まる。
     憂鬱だ。これから長い付きあいになるだろうというのに。
     なんだあの恐い先生は。から揚げ弁当ポテトハンバーガーカップ麺酒タバコエナジードリンクシュークリームのエンドレスルーティンがまずかったのだろうか。まずかったのだろう。健康診断もよくひっかかっていた。けれどだからといって頑張って改善しようとも思わなかったのだ。病気にもならなかったし。ずっと元気だったし。
     しかしなのだ。
    「茂武さん、こんばんは! 体調どうですか? ご飯もよく食べられましたか?」
     看護師の田中くん。いつも満面の笑みにキラキラとした明るい瞳でやってくる。
     茂武の入院食は修行のように質素なもので、ぶっちゃけ「くそまずい味もしない!少ない全然たりん!」とクレームしてやりたいほどだ。いや、腹は減るので全て食べはするのだが。
     しかしこのキラキラでとにかくいつもいつも優しい田中くんにクレームを入れられるほど腐っちゃいない。弱った心に田中くんの笑顔は一番の薬だった。
     田中くんはこの入院生活の心のオアシスである。毎朝、おはようから、夕方まで。日によっては夜中も様子を見に来てくれる。時々夜も出勤している田中くんのシフトはどうなっているのだと聞きたいが聞けずにいる。
    「今日も酸素と血圧量りますよ~」
     指先にクリップのような機械を挟まれる。
     にこりと微笑まれると顔が緩んでしまう。すきにしてください♡とすべてに従うのだ。
    「茂武さん、すみません。今日は採血もさせてくださいね」
     田中くんに頼まれドンとすぐに点滴のない腕を出す。ぐるぐる寝間着を腕まくりして、どうぞと差し出す。田中くんに刺される注射なぞ恐くない。あの八木先生も田中くんほどとは言わないが優しくしてくれたらいいのに。
    「ありがとうございます、じゃあちょっとみさせてくださいね」
     田中くんのしっとりした手がそっと腕をさする。
     駆血帯をぎゅっと巻かれて「痛くないですか?」と寄せた困り眉で聞かれると思わずニヤける口許を隠した。「いえ、かわいいです!」と口走りそうになる頭をふるふると煩悩ごと振りおとす。ぷくりと浮いた太い血管を見ると田中くんはシリンジの封を切る。針を装着し蓋を開く前にまた血管をしっかりと確認して触れた。田中くんの手は温かい。
     注射は大嫌いなはずだが、今はなんだかほっこりする時間だった。
     真剣な顔の田中くんの顔をみていると「真顔になるとすごく男前だなぁ」なんて。
    「ちょっと、茂武さん~、そんなに見ないでください、緊張しちゃうじゃないですか」
     照れくさそうに微笑まれると、心臓が痛くなる。やばい、田中くんかわい天使オアシス。
    「えへへ、すみません、任せてください。じゃちょっとちくっとしますね~」
     田中くんは声をかけてくれてそっと針を刺す。本当にちくりとしただけですぐに終わる。田中くんはどうやら注射が上手い。しかも自分の血管はわかりやすい。どす黒い血を容器に移し替え田中くんはすぐに腕を解放しペタリと丸い絆創膏をはってくれた。
    「ありがとうございました!もうすぐ手術ですね、頑張りましょうね」
     にこりと微笑む。
    「かわいい」
    「えっ??」
     おっと心の声が漏れた。目を泳がせてうまくごまかす。
    「そ、そのペン、かわいいですねえ~」
     丁度良く田中くんは何やら凛々しい犬が印刷されたボールペンを使っていた。セーフ。
     指摘すると田中くんは「ああ、これ!」と嬉しそうに見せてくれた。
    「お気に入りなんですよ~、デザインも派手過ぎなくて。でもこのわんこが可愛いんです。芯交換するやつで、ずっと使えるしめちゃくちゃかきやすいんです!」
     にこにこと話す田中くんに同じくにこにこと頷き「きみの方がかわいいよ」と口を滑らせそうになるのを飲みこんだ。
     この病院にまわされて主治医は恐ろしいし優しくないし凹んでいたが入院してからはこの田中くんが癒しでなんとかなっている。手術はあいつに命を握られ恐いが田中くんによしよししてもらえるならと、ふざけたことを考えながら大人しくふとんに潜り込んだ。


     そしてあっという間に決戦の日である。
    「じゃあ茂武さん一緒に手術室までいきましょうか」
     担当の田中くんに声を掛けられ緊張するが、力が湧いてくる。
     事前に手術担当の看護師からの詳しい内容や麻酔の先生からも説明を聞かされもうなんとでもなれ状態にはなっている。
    「じゃ、頑張ってくださいね、大丈夫ですからね!」
     田中くんと引き離されるとよくわからない手術着の何かの先生や手術室から来た看護師にも声をかけられる。名前なんかを聞かれて、あっという間に手術台に乗せられる。当たり前だがあいつが居る。
    「おはようございます、茂武さんよろしくお願いします。緊張されていますか」
     あれと思う。目元しか見えていないあの鬼八木に違いないがいつもより幾らか声は穏やかだ。
    「はい、」
    「そうですよね。任せてください」
     ああ、やっぱり八木だ、そっけな……。なんて思っているうちに看護師から麻酔が入るだのなんだの点滴のところすこし沁みるかもだのなんだの声をかけられる。おおきく息をすって~なんて言っている内に。



    「茂武さーん」
     八木の声がした。
    「終わりましたよ、お疲れ様です」
     そっけな。ああ、八木先だ。手術してたんだっけ。あれ、なんかもういてえな。
     看護師たちにも色々話しかけられるがまだぼんやりとする、なんか痛い。




     無事に手術は終わったものの終わった日はなんだかあまり覚えていない。朦朧とていたような、なんかあやふやだ。
     夕方に田中くんがやってきたことはよく覚えている。大丈夫ですか痛いですよね、と心配しながらも、努めて明るく元気づけてくれた。
     とにかく痛いし吐き気で気持ち悪くて大変だったが、薬でなんとか乗り越えた。
     田中くんが一番効く。

    翌朝。
    「茂武さん。おはようございます、調子はどうですか」
     初めて病室に八木がやってきた。
     診察室や手術室でみる八木でない八木はなにやら新鮮だ。
     こんなにでかい男だったのか、なんて思いながら、これまでの不満をぶつけるように呻く。
    「いてえっすね」
    「はは、そうですよね。痛み止めいつ入れました?」
     わらってんじゃねえ。吊るした点滴を確認している八木先には怒りが湧くのが謎だが、八木は気にもしてなさそうだ。
    「え、さあ……いつすかね」
    「我慢しなくていいので、遠慮せず看護師にいってくださいね」
    「ああ、はい……」
     体調が悪いことをいいことに素っ気ない返しをするが八木には当然効かない。
    「無事に全部とりましたからね。よくなります、後は傷が治るまではすこし辛いですが頑張りましょう」
     あれ。八木ってこんなに男前だったか。横目で八木を見てまた浅い息で頷く。
     んん??あれ???
    「あれ―――?」
    「どうしました?」
     拗ねている自分を置いていこうとする八木のポケットにふと見えたものを凝視する。
     八木は不思議そうにとどまった。
    「それ……」
     八木の白衣のポケットに刺さっているのは田中くんと全く同じボールペンである。
    「めずらしい綺麗な色のぺんですね」
    「ああ、これ……はは。少し派手ですかね」
     手を伸ばすと、八木は大人しく渡してくれた。八木のイメージだと単色の地味普通量産ボールペンそうだが、わりとデザインがしっかりあるそれを使っているのはなんとなく不思議だ。
     え、まてや。は?おそろやん。傷口開きそうな怒りがすこし沸く。怒る体力も元気もないが。なんで。こんな柄のもの珍しいと思うのだが。何色かあり芯を替えるタイプで種類も多いが売られているのはシンプルなものばかりなのに、何故あえて少し派手なこれを。
    「なんか期間限定かなんかでね、もらったんですよ」
     八木は見たこともない穏やかな顔で応えた。は? そのペン見ましたよ。期間限定ものですか、それ。へえ。
    「…………たなかくんですか、」
     病床だからか脳直で呟くと。
     答えがない。
     いつも全ての質問に即答する八木がなぜ。怪訝に思い見上げると。
    「あ、ぁ、え……、どうして田中だと、」
     は??????どうして???
     八木がなにやら気まずそうな照れくさそうな顔になる。
     ふざけんな。いたいんだよ、こっちは。
     あ???は??? かわいい職場の年下だろう田中くんにペンを贈られるなんて懐かれたもんだな八木。不愛想なくせに。部下からの信頼は厚いタイプか。は???
     ん。まて。ならばなぜおそろ????田中くんどんだけ八木に懐いてんの。
     ん??
    「ああ、まあ……そうなんですけど、あいつ、も使ってましたか……」
     は??????なんで妙に気まずそうなんだ。あのいつも大胆不敵八木のくせに。は???
    「ええ、よくメモしたりしてますよ、それと同じので、いや、少し色ちがいですか??」
     おい。まてや。職場の同僚を患者の前で「あいつ」とかいうな。なに???仲良しなんか。
     どうした八木。様子がおかしくないか???
     なんだかどぎまぎしている八木先にペンを返してやる。
    「じゃ、茂武さんまた明日もうかがいます。数値も安定しているので、安心してゆっくり休んで下さい」
     誤魔化すかのごとく流して去ろうと挨拶する八木。
    なにも安定しねえわ。気になるわ。非常にモヤつきを感じながらしっかりとおそろペンを握りしめた八木の背中を睨みつけた。カーテンちゃんと閉めていけよこのやろう……。


     それから数時間後。
    「茂武さ~ん。お身体どうでしょうかぁ~。痛みまだひどいですか?」
     田中くんは相変わらず眩しい輝く笑顔で現れる。
    「いえ、昨日よりは全然いいです、」
     思ったよりも元気があって拍子抜けしているくらいだ。
     じりじりと痛みはあるがすぐにでも歩けそう。それより我がアイドルの天使田中くんに聞きたいことがある。
    「あの、田中さん、なんにも関係ないことなんですけど聞いても良いですか……」
    「え、なんですか! なんでもいいですよ!」
     田中くんは元気が出たと思ったのか明るい笑みを向けてくれる。
    「そのボールペン、八木先生も使ってますよね」
     気になる田中くんのポケットに差さったペンを指さすと。
    「え」
     八木と同じくぴしりと固まった。
    「あ、ぁ、……そうなんですか!?」
     動揺を隠せない正直者の田中くんは苦笑いになる。
     ていうか。その答えは予想外だ。まさかの知らぬふり?????
     余計あやしくない???
     これで涼しく「そうなんですよ~」と言われた方がまだ……
     まだ????なに???
    「え、えええ?? そう、でしたよ!? 八木先生、それとおなじやつ……」
    「ああ、し、知りませんでしたぁ! これ書きやすいので! つかってるのかなぁ!」
    「えええ?? 知らないんですかぁ!?」
    「はははは、八木先生も使ってたんだぁ!」
     バレバレの嘘のつきあいである。唯一、八木先だけは「嘘は」ついていなさそうだったが。
    「ええええ??全く同じでしたよ!!?色違い!てっきりあわせてんのかと!」
    「合わせ!? そんなまさか! は、はははっ!へええ~~八木さんてば似合わないですよねええええ、かわいいペンなんて、ははははは」
     おい。ぼろがでてんじゃねえか。
    「い、犬好きなんですかねえ、八木さんあははは!」
     だからそこは「八木先生」でしょう田中くん……
    「八、八木先生が犬好きだったなんてね~~あははは! さ、茂武さん、体温はからせてください」
    「もう測りましたよ」
    「へ、あっ、そうだ! ごめんなさい! 俺ってば!」
     いつのまにやら妙に顔が赤くなっている田中くんに違和感しかない。
     田中くんはかわいくて優しい看護師だが、動揺したり慌てたりすることはほぼなく冷静でとても素晴らしい仕事ぶりの姿しかみたことはなかったのに。
    「もう、ヘンなこと教えないでくださいよ~!」
    「ヘンじゃないですよ、可愛いペンですよね。八木先生も貰ったってなんか嬉しそうに言ってましたよ」
     追い打ちにいうなり田中くんはビク!と肩を跳ねさせるように驚いた。
    「エッ!! あ、ああ~~~~、そうなんですね!知らんかったなあ」
    「あんなに嬉しそうに話すもんですし、もしかして」
    「もう八木先生の話はいいですって、術後ですよ、ゆっくりしててくださいよ~」
    「恋人からもらったとか!」
     傷む喉よりふっかける元気のほうがあった。
     案の定。
    「こっっ、ぃッ……! し、知りませんよそんなこと!」
     どれだけ自分が挙動不審なことに気付いているのだろうか。
     田中くんはおどおどと慌てて「じゃあ、また来ますからね!」といつもの笑顔をなんとかつくってきっちりとカーテンを閉めていった。


    なんやねん。オフィスラブしてるやん……。ふざけんな、こっちはいてえんだよ……
     おれのてんしかえせ。鬼医者……







    「ただいまー」
    「おかえりなさい八木さん、晩御飯いっしょ久しぶりですね~!」
    「だな、何か食いに行く? つくろか?」
    「一緒につくります~?」
    「おー」
    「ね、ね、八木さん……こんなん使うかよって言ってたのに、使ってくれてたんですね!」
    「ん? なんのこと?」
    「えへへ、病院では俺が隠れて使いますね!」
    「ん??? なに?」
    「ひみつ!」
    「え~~なんだよそれ! ちょっとこっちこいお前!」
    「ひゃ~~!」





       
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