ミントグリーンの悪夢「あなたの瞳に似ておりますね」
2杯目の酒の支度をしていると、隣で見ていた男が惚れ惚れとした様子で何かのたまっている。アブサンのミントグリーンと俺の目の色味が似ていると言いたいそうだ。
嫌な予感がする。聞かなかったことにしよう、と無視を決め込むがとうとう肩に手を添えられ、頬を染めてうっとりしたため息。
「いつもあの子達にかかりきりではありませんか。私とて、あなたのためにこんなにも心を砕いておりますのに」
だからどうした、俺にどうして欲しいと?
後ろからするりと腹に腕が回され、首に息がかかる。
背中がざわざわと粟立つ。
思わず懐に手が伸びるが、ダメだ、こいつは殺せない。
どうする、絞め落とすか……?!
「デルウハ殿?」
はっ、と目が覚めると所長が向かいの椅子から立ちながら心配げに覗き込んでいる。
酒の支度をしたかと思ったが、どうやら夢だったようだ。よかった、本当に。
慣れた様子で脈を取られて、少し飲み過ぎですよ、と苦笑してくる。
「あ、ああ……そうだな、水を飲もう」
「それがよろしいでしょう。ところで少し思ったのですが、この酒の色はデルウハ殿の目の色に似ておりますね」
やめろ、と言いかけて水差しからグラスに水を注ぐ。
悪い夢だぜ、まったく。