愛すべき女「にこ」
低く、やや切羽詰まった様子で呼ばれたにこは視線を切ってその頬に伸びようとする手を拒むようにそっぽを向く。
夫婦の寝室、ベッドの上に向かい合って座っており、夫であるところのデルウハはあぐらをかいて大柄な背中を丸めて彼女の顔を覗き込んでいた。
「望みはわかる、最初から五人がいいって言ってたもんな。でもお前が健康だから叶えられる願いなんだ。あの時大変だったじゃねえか、あんな思いはもうしたくないんだよ」
「……今は元気だもの、大丈夫よ」
眉尻を下げて覗き込む夫の目を見こそすれ、その目は頑冥なまでに夫の提案を拒絶する険しさを湛えている。眉間に皺を寄せ、睨め付けるも同然であった。
「命懸けなのは今まで全部そうだったもの。命を賭けるにこが産みたいって言ってるののどうしてデルウハに止められると思うの」
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