こたつでみかん 冬である。
外に雪が降りしきり、年の瀬の足音が聞こえる頃であった。
「こたつもらったの、みかんもあるし明日はのんびりしましょ」
そう言いながら妻である女のにこが上機嫌にそれを設えているのを見る。
天板と足が別になった正方形の座卓があり、その上に綿の入った布団を乗せて、天板を置く。
出来上がったものを見て、デルウハは「これがコタツか」と呟いたのであった。
台所に行って上機嫌な足取りでやってきた妻、にこが木の盆に盛ったみかんを座卓の中央に置いて、お茶とってくるわね、とまた引き返していく。
やかんで湯を沸かす音を聞きながら、座布団に座ってその布団をめくって足を入れる。コンセントから伸びる電源コードのスイッチをオンにすると、低い音を立ててヒーターが起動する。
じわりと熱を感じる頃に、急須を持ったにこがやってきて斜向かいに腰掛けたのであった。
「どう~?」
「別に。お前は寒がりだから良かったんじゃないか」
「そうなのよね、あったかくて出られなくなっちゃう」
急須から湯呑みに緑茶を注いでデルウハの前に置くと、その手でみかんを取って皮を剥く。
デルウハもそれに倣うと、にこが彼の手元を見るので眉をひそめた。
「やらんぞ」
「毎度思うけど、その太い指で器用に剥くわよね〜」
「このくらい誰でもできるだろ……」
ふーん、と相槌を打って湯呑の緑茶をすする。
衣擦れの音がしてにこが足を伸ばすと、あぐらをかいていたデルウハの足を軽く突く。
「やめろ」
「隣行っていい?」
「狭いだろ」
無視して一度こたつを出ると、膝歩きでやってきて隣にいささか強引に陣取ると自分のみかんと湯呑みを手元に寄せる。
「狭い……」
当人は苦言もなんのそので二つ目のみかんに手を伸ばして、早々に剥いて一粒を手に取るとデルウハの口元に差し出す。
「はい、あーんして」
非常に上機嫌だが足元はにこの足があたる程度には狭い。色ごとでも持ち込みたいのかと様子を見たが、単純に隣に座りたいだけのようだった。半ば押し込まれたみかんを咀嚼して飲み込みつつ、彼女の手が太ももに置かれるのを見た。
目線は太ももに向いていたが、ちらとこちらを見る。
無視して湯呑みから緑茶を注ぎ足すと、私も、というので彼女の湯呑みにも注ぐ。
彼女の湯呑みに入れて空になるので、どうする? と視線で尋ねた。
「入れてきて」
太ももから手が離れたので内心で安堵しつつ立ち上がる。
軽くすすいで淹れ直してこたつに戻ると、仰向けに寝転がって腹から上だけを出して腕を投げ出したにこが笑っている。
「ありがと〜」
「……」
軽く紅潮した頬と潤んだ目を見て、ため息をついて急須を置く。
少し考えてから、彼女の隣に大きな体をなんとかねじ込んだ。