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    筆ヵ谷さん視点のモノローグ落書き。こんな内心だった可能性もあるのかな〜。歳のこととか過去は全部捏造です。幻覚100%。

    かわいい人 あなたは天才だけどただの人間で、その心にはすごく柔らかい部分がある。

     初めて肌を重ねた時、私の胸に顔を埋めている耳が赤くなっていたのを見て「かわいい人」と思ったのをなんとなくずっと覚えている。

     あなたのことがずっと大嫌いだったの。
     私より年下のくせにあっという間に勉強で追い抜かれて、足は遅いくせに頭はずっと良かった。
     最初は私が褒めてもらえたことも、すぐ君の方が褒められるようになった。
     大人になって研究職について、餅屋先生のお気に入りになるのもすぐだった。
     どれだけ勉強しても、過去の論文を読み耽って研究をしても、軽々と空を飛ぶように私の上を追い越していく。
     大嫌いだった。転んでしまえとすら思っていた。

     いつだったっけ、実験の手伝いをしたときのこと。
     ピンセットを渡すのに指先が触れて、失礼って言った君の顔が真っ赤だったの。風邪でも引いてるのかなって思ったけど照れてたんだと気が付いたら急に君が人間に見えて、安心した気がしたけどすごく不安な気持ちになったの。

     好きですって震える声で告げてきた時、私笑って「じゃあ付き合おうよ」って言ったの覚えてる?
     あの時ね、嬉しい気持ちと気持ち悪さで頭の中がぐちゃぐちゃだった。
     私の上を悠然と飛んでた竜が急に同じ言葉で話しかけてきたみたいだった。 
     追いかけてたはずなのにいつの間にか隣にいて、一緒に走ろうって言い出したみたいな。わからないよね、わかって欲しいとは思ってないから。

    ◇◇◇

     青ざめた顔で「研究は失敗なんです」と研究者の顔をしながら人間の目で私に告げると、助けを求めるように私の手を握る。
     「失敗……」
     「あれは間違いです、今原因の箇所を探っていますが、きっと細胞分裂の段階で問題が……あれでは分裂に伴って無限増殖するイペリットができるだけだし、殺意を抑えることもできない。今すぐ破棄しなくては」
     冷や汗、震え、握る手は酷く冷たい。
     私に縋り付く手をそっと優しく握り返して顔に微笑みを貼り付ける。
     
     仕方ないよね、さすが竜野くん、すぐに気が付いてすごいよ。
     一緒にみんなに話してすぐに中止しよう。
     大丈夫、私がついてるから。

     そう言ってあげなきゃって言葉を考えるのに、私の微笑みを見て安堵の顔を浮かべるあなたがあまりにも人間だったのが許せなかった。
     ほっとして顔に血色を取り戻して笑う君が、どこにでもいる青年であることに耐え難いほどの苛立ちを覚えた。
     あなたは悠然として傲慢で上しか見えないひとでなくちゃいけないのに、なんで、取り乱して正体を失って、私に泣きついているの?

     「……竜野くん、あなたが間違うはずなんてないの」
     彼の手を強引に振り解く。
     手元にあった試薬の一錠をポケットから取り出して、口に放り込む。
     やめて、と絶叫する君の声を聞きながら狭くて低い天井を仰いで、一息で薬を飲み下した。

     
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