11.11「今日は面白いものを手に入れたんだ」
「面白いもの……ですか……?」
鍾離の邸宅にて名を呼ばれ、数秒とかからずに馳せ参じた。ひとまず鍾離に大事がないことが確認できて、ほっと息を吐く。
鍾離の手には見た事もない小さな箱が握られている。赤一色で塗られた箱の中心には棒のような絵が書かれていた。魈は、鍾離の言う『面白いもの』とやらをしばし凝視してみたが、突然何かが飛び出してきたりするような気配は感じなかった。
「これは異国の菓子で、旅人がくれたものだ」
「菓子……」
「甘味が強いもののようなので、お前にも食べられるだろう。今日はこれを共に食べたくて呼び出したのだが、どうだろうか」
鍾離がただ甘味を魈と食べたい、と呼び出されたことに対しては、素直に嬉しいとは思う。しかし、そのような用向きならばいつも鍾離が望舒旅館へと足を運んでいるような気がしたので、些か不思議に思った。
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