君はきっと知らないだろうね。
アークボルト城ですれ違ったあの時から、僕は行く先々で君のことを探している。
自分に向けられたわけでもないのにひしひしと伝わってくる、氷のように冷たい殺気。
バトルレックスを前にした時の、冷酷な程に迷いのない太刀筋。
まるでこの世界のすべてを憎んでいるようで。
その「すべて」の中には、君自身も含まれているような気さえする。
僕などが心配するまでもなく、君は強い。
それなのに。
君には、ふとした拍子に脆く砕け散ってしまいそうな危うさを感じる。
だから、訪れた街々で君の話を聞けた時。
君の姿を見ることができた時。
僕は、人知れず安堵しているのだ。
君がもしそれを知ったら、心配される筋合いなどないと怒られるかもしれない。
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