熱ても冷めても話をしよう「よ、また人間観察ってやつか?」
芽依は昼下がり、視界端のカフェテラスに居座る幼馴染に声を掛けた。黒縁メガネの奥でゆるやかに行き交う人々に移ろっていた視線は、どこかぼんやりとした目付きで来訪者を迎え入れる。眠たげなように見える瞳は、どんくさい性格が現れでているな、と芽依は常々思う。
「芽依さん、来たんだ」
「まあな。相席失礼」
目の前の人物には何の連絡もしていない。
店員に「あそこのツレです」と告げていた芽依は、客の出入りが少ないからか、スムーズに昴の席へと通された。
「つまんなくね?人見るだけって」
「うーん、まあ…。君が来なかったら帰ろうかなと思ってたかも」
「そら悪かった。カフェラテひとつ」
お冷を置いたウェイトレスにそう告げて、昴のカップを見遣る。白い磁器の底を覆い隠すブラックは、思い出したように口を付けられた。
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