魔性の花を抱いている「いつまで戯れとるつもりだ、鬱陶しい」
そうは言ってもだ。向けられた背を覆う長い髪の洋蘭色はまだ半分寝ぼけたような視界にも鮮やかに写るので、そこへつい、手が伸びるのも仕方があるまい。幾分寝乱れた色糸を整えてやるように指を入れながら、濃い蜜色の肌をさりさりと辿る。ぶつくさ垂れる不平をそうして延々無視していると、やがて指先を擽る甘い感触はその本体ごと逃げていってしまった。……なんだ、つまらん。
ビーマが欠伸をひとつしている間に、直ぐそばで淡い魔術光が膨らんでは消える。共寝の朝には珍しく、先に床を抜け出したドゥリーヨダナは霊基の編み直しを──つまりは身支度を終えた。昨夜とは違うラフな装いに切り替え、同時にさっぱりと短くなった襟足を確かめるように撫で回してから、肩越しに視線を寄越す。
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