願わくばいつものように書類整理のため事務所のソファに座っていれば「にいさん」と鈴のような綺麗な声が入口の方からし、そちらに顔を向ければ
「ゆきちゃん」
従兄妹である彼女がいた
彼女は僕に近づくと目元を指先でスッと撫で
心配そうな顔で「寝てないの?」と問うてくる
「んー…寝てるつもりなんだけど…」と思わず目線を外せば長年付き合いのある彼女にはすぐにバレたのであろう、1つ溜息を零され眉を下げ「眠れてないのね」と疑問形ではなく断言のように言われる
「……うん」
「あの日からよね」
「ハハッ、ゆきちゃんにはやっぱりバレちゃうよね」
「私だけじゃない、さっき喫茶店に行けばマスター達も心配してたよ。最近顔色が悪いって」
「あー……僕ってそんなに顔色悪い?」
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