色欲の吸血鬼 後編「お手をどうぞ、姫君」
「俺は姫じゃねぇ」
竜馬は、女たちの代わりになる選択肢をした。
吸血鬼の男が手を振ると、女たちは皆我に返った。そして、脇目も振らずに屋敷を飛び出していく。
依頼人の男には護衛というか、女たちが安全に戻れるようにと頼んだ。自分一人の犠牲で、これだけの人数が助かるなら、それでいい。反撃の機会はいつでも狙えるので問題はない。
「そういえば名前を教えていなかったな。俺は隼人。お前は?」
言いたくなくて口をつぐんだ。しかし、隼人の目を見ると、自然と口が開く。
「りょ、うま」
「竜馬、か。俺のところに来てくれて嬉しいよ」
そう言って、そっと抱きしめてくる。
そのままその長い牙を突き立てられた。思わず顔を歪めると、後ろ髪をそっと撫でられる。
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