埋火/火相を見る「俺んとこの親はろくでなしだったからさ」
すやすやと健やかな二人分の寝息が満ちた部屋で、ファウストはネロと晩酌をしていた。
ファウストはこいつらの親みたいだな。
ネロがそうファウストに言ったから、ファウストも同じように返したら戻ってきたのがそれだ。
頑なに床で寝ると言ってネロのすぐ横で丸まっているシノの頭をそっと撫でる手付きは優しい。
愛情というものは、どこかで自らに注がれた経験がなければ別のものに与えることが難しいのではないだろうか。
ネロの親はろくでもない人物だったかもしれないが、その後、ファウストと出会う前にネロが出会った誰かが彼にちゃんと愛を与えていたのだろうと思う。
多寡はどうあれ、彼が今シノに向けているような、慈しみを含んだ視線を向けられた覚えがあるのだろう。
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