Easy as Pie 庇われたと気づいた時には谷ヶ崎は地面に倒れていて、彼を刺した男の喉を掴んでへし折った燐童が駆け寄った時には、腹部に滲む赤はすでに滴るような量になっていた。
「……谷ヶ崎さんっ!」
駆け寄って、脱いだ上着で血まみれの腹部を押さえる。
「いてぇ、」
「そりゃそうでしょうよ!腹切られてんだから!……どうして僕を庇ったりなんかしたんです!」
「うるせえ。あのまま刺されてたらお前、死んでただろうが、」
だから自分の体を盾に庇ったのだと、谷ヶ崎は当たり前のように言った。
「文句は、聞かねえぞ」
「もうバカっ!」
「は、」
谷ヶ崎が息を吐くように笑う。傷が痛むのだろう。当たり前だ。大振りのナイフの先を引っ掛けるようにして切られた腹は、肉がぱっくりと裂けていて、出血量も多い。谷ヶ崎の反応も徐々に鈍くなっている。早く傷を塞がなければ……だが、どこで?
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