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    ぽたろー

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    5/26のインテで配布した無配の再録です。
    後日談なので本を読まないと分からない不親切設計になってますがご了承下さい🙇‍♀️

    5/26インテ大阪 無配 「宴は続くよどこまでも」※フリーナ視点

     激動の撮影期間もクランクアップを迎え、あとは公開の日を迎えるだけになった。予告映像をアップすると一晩で再生回数が百万回突破、公式アカウントのフォロワー数も急増するなど映画公開前からネット上では話題沸騰と大盛り上がりだ。その中には当然僕のことを称賛する声も多数寄せられていてそれを見る度やっぱり僕って天才だったんだね、と鼻高々になる。でも僕史上渾身の作品が撮れたのは僕だけの力じゃなくて撮影クルーと演者、並びに側でサポートしてくれたクロリンデ、裏方でずっと動いてくれていたヌヴィレット、それにいつも最高なお菓子を差し入れてくれたナヴィアたちみんなのお陰だ。心の中で合掌しているとナヴィアのじとりとした目が突き刺さる。
    「なーに一人で笑ってるのよ、フリーナ」
     おっと僕としたことが、表情に出ていたみたいだ。
    「いや、僕は周りの人に恵まれているなぁって思ってね」
    「勿論それもあると思うけど、フリーナの人柄と人望があるからみんなついていきたくなるのよ」
    「ナヴィアに面と向かって言われると照れちゃうな」
     頬を掻きながらぽわぽわとあたたかい気持ちに包まれていると、こちらを見るクロリンデは柔らかい眼差しでジョッキを傾けている。
    「それにしても遅いわね、少し遅れるとは言ってたけど」
     ぱたぱたと顔を扇ぎ照れ隠しをするようにナヴィアは話題転換しスマホに目を向けている。
    「撮影が終わったとしてもあの方の仕事は終わった訳じゃないからな。私も手伝おうとしたのだが断られてしまった」
    「ヌヴィレットは真面目だから自分の仕事を他人に負わせたくないんだろう。でももし本当に辛そうだったら無理矢理でも仕事を奪い取ってあげてね」
     過保護な親みたいなこと言うわね、とナヴィアは快活に笑う。
    「古くからの知り合いだしほら、変に危なっかしいところがあるじゃないか。そういうところが心配なんだよね」
     ヌヴィレットは他人の感情には機敏に反応するくせに、自分に対して向けられる感情と自分が感じている感情には目を剥くほど疎いのだ。そんな彼があのリオセスリと恋人になったと前触れもなく突然報告された上に随分と拗らせていたことには流石の僕でも驚きを隠せなかったが、ヌヴィレットが愛の幸せを知るのだと思うと純粋に嬉しくもあった。
    「確かにそう言われるとそうかも」
     ゆっくりと肺の中の息を全部吐き出すように呟くと、すでに興味がだし巻きに移っていたナヴィアに代わりクロリンデがふっと笑う。
     そんなこんなで料理を摘まんだりお酒を楽しんでいるとがらりと個室のドアが開いた。
    「待たせてすまない」
     ヌヴィレットの姿が見えたかと思うと後ろからリオセスリがぬっと顔を出した。
    「こんばんわ」
     にっこりと笑い、ヌヴィレットの横に立つとさりげなくその大きな手で腰を抱いた。
    「あれ、ヌヴィレットだけじゃなかったのかい?」
    「君たちと飲みにいくと話したら付いてくると言い出してな」
    「あんた達には色々とお世話になったからな、お礼を言っとこうと思って」
    「そう言ってほんとはヌヴィレットさんに悪い虫が付かないように見張りに来たんでしょ」
     ナヴィアの指摘にリオセスリはヘラりと笑って受け流す。とりあえず部屋に入ってくださいとクロリンデが促すと席を移動し、二対三に別れて座った。
     対面に座りタブレットのメニューを覗き込むリオセスリとヌヴィレットの距離は、少し顔を動かすと頬と頬がくっついてしまいそうなほど近くて見ているこちらがドキドキしてしまう。頼み終え端末機を元の場所に戻すも、リオセスリの腕はヌヴィレットの肩に回ったまま距離は近いままだ。
    「なーんか見せつけられてるみたいで気に入らないわ」
     ナヴィアがじとめで不満そうな声を出すとヌヴィレットの頬がかっと赤く染まる。強引に振りほどかない辺りヌヴィレットはまんざらでもなさそうだ。その様子になんだか安心するような揶揄いたくなるような妙な気持ちになって口角が上がる。
    「ヌヴィレットに相談された時はびっくりしたけど仲良くやってるみたいじゃないか」
    「どうも、その節はご迷惑をおかけしたな」
     まったくだよ、とオーバーに呆れたふりをし枝豆を摘みながら言うとリオセスリも口元は笑みを作ったまま眉を下げてわざとらしく反省している態度をとる。
    「そういえばヌヴィレットさん、約束覚えてるわよね?」
     隣に座るナヴィアが軽く腰を浮かせ机に手をつき、目を輝かせながらヌヴィレットに詰め寄る。僕もその心躍る”約束”を思い出し、忘れているとは言わせないよ!とナヴィアの援護射撃をする。
    「そういえばそんな話もあったな」
     てっきり白熱する僕たちを宥めてブレーキをかけてくれるのかと思っていたが案外乙女な所があるクロリンデも興味津々らしくこちら側に加勢してくれる。
    「約束ってなんだ?」
     この場でリオセスリだけが意味を理解できていないようで隣のヌヴィレットを見るも、ヌヴィレットは下を向いて口を閉ざし答えるそぶりはなさそうだ。
    「水族館のチケットをあげる代わりに君たちのことについて根掘り葉掘り聞かせてもらうって約束したんだ」
     僕が勝ち誇った顔で教えてあげるとリオセスリはなるほどな、と眦を下げた。
    「でも悪いな」
     そう言うとリオセスリは俯くヌヴィレットの顎を上げ、唇にそっとキスを落とした。がやがやとした雑音がどこか遠くに聞こえ、この空間だけまるで時が止まったかのように静まり返る。
     驚きで目を見開いているヌヴィレットの頬を愛おしそうに撫でると、こちらに向かって蠱惑的に笑う。
    「これで許してくれないか?」
     きゃぁとナヴィアは楽しそうな悲鳴を上げ、クロリンデも満足そうに目を伏せている。ちらりと向かいを見ると可愛そうなほど顔を真っ赤に染めたヌヴィレットがリオセスリに詰め寄り、それをリオセスリがまあまあと宥めている。
     うまく言えないけど、この空間の身体の芯にじんと染みるような多幸感溢れる空気に何だか泣きたくなってふうっと大きく息を吐き出す。
    「ヌヴィレットのこと、よろしく頼むよ」
     小声で言ったつもりだったがリオセスリの耳にはしっかり届いていたみたいでばちんとウインクが返ってくる。
     今のもなんか親みたいな発言だったなと思うと自然と口角が緩み、子の幸せを願う親の気持ちが分かるような気がした。
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