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    sejinekku

    @sejinekku
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    sejinekku

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    今日は何の日

    ##小説

     ――ノクト、今日、何の日か知ってる?
     ノクティスの部屋でいつも通りだらだらと過ごしていたプロンプトはスマホを見ながらそんな話題を振ってきた。ゲームの周回をしていたノクティスはちらりとプロンプトの方を見ると、再び興味無さげにスマホに視線を戻す。
     「えー!ちょっとは興味持とうよ。そうだ、正解したらいいものあげるからさ!」
     「……調べたら1発で答え分かるだろ、それ」
     「ちゃーんと考えてくださいー。ほらシンキングタイム」
     「んな事言われても。って、そんな目で見るな、考えるって!」
     じぃーっとノクティスの方を凝視し続けるプロンプトの眼力に降参したノクティスは一旦アプリを閉じ表示された日付を見た。
     5月23日。
     知り合いの誕生日の覚えはない。なんならプロンプトの誕生日はもっと先だ。かと言って今日は祝日でも無い。
     ならば、なんなのか。話題に出すということは、少なくともプロンプトの興味を引くほどの『何か』だというのは分かる。それならゲームの発売日だろうか。つまり景品はそのゲームソフトという所か。
     オレにしては名推理かもな。と思いながらもまだ確信が持てないノクティスはプロンプトの心を少しだけ揺さぶる。
     「つか、いいものってなんだよ。しょうもないものならサイトかなにか調べて終わらせるぞ」
     「ひどくない!?ちょっとは親友のクイズに付き合ってよ」
     「じゃあクイズならヒントとかくれっての。ノーヒントは無理ゲーだろこれ」
     「うーん、しょうが無いなぁ。ヒントかぁ。……こ、恋人同士でするもの?あっ、やば!もうこれ答えじゃん」
     「恋人同士?」
     想定外のヒントにノクティスは首を傾げる。恋人同士ですること。
     「……手を繋ぐ、とかか?」
     「ノクトピュアすぎるでしょ……。手繋ぎは恋人同士じゃなくてもやらない?」
     「んじゃなんだよ。恋人ならまず手を繋ぐだろ。それ以外とか思いつかねぇわ」
     「……キスの日、なんだって。今日」
     そう告げたプロンプトはいつにも増して真剣な顔つきだった。しかしその後、もうノクトが変な事言うからこんな空気になっちゃったじゃん〜!と、いつも通りの快活な笑顔をうかべた。
     「それで、景品ってなんだったんだよ」
     「話変えるの早くない?」
     「……恋人同士はキスをする。そういう認識を持てばいいんだろ?で、なんだったんだよ」
     「……ノクトってキスした事ある?」
     「あるわけないだろ!そういうお前はあるのかよ」
     「ある訳ないじゃん。オレだよ?」
     「だよな」
     「なんで安心してるのさ!ひどぉ」
    わざとらしく落ち込んでみせるプロンプトに、再び問いかける。
     「で、景品は?」
     「間違えたのであげません〜。残念でした」
     「んじゃ、周回に戻るわ」
     「ホントそういうとこ諦め早いよね」
     「聞いたところで答えねぇなら、深く聞く必要ねぇだろ」
     「え、もうちょっと興味持っても……」
     「どっちなんだよ、ハッキリしろっての」
     ノクティスが呆れつつ、気になったことをプロンプトに投げかけた。
     「なんでそんなクイズ出したんだよ。キスとか興味あんの?」
     「え。あぁ!興味はもちろんあるよ。だって、ほら、キスって好きな人とするじゃん。なんか青春!って感じするし。いいよねぇ」
     「そういやキスってさ、挨拶がわりにする地域もあるって聞いだけど?」
     「マジ?」
     「マジ。なんならここで実践してもいいけど」
     「え!?今!?ここで!?ノクトと?オレが?まってまってなんで」
     「そういうつもりで元々この話題振ったんじゃねぇの?」
     「べ、べつにそんなつもりは……、はい。ありました。正解したらキスして冗談で流すつもりでした」
     降参してしどろもどろな言い訳を紡ぎながらプロンプトはスマホで顔を隠す。そんなものでは隠しきれないのは本人が1番わかっているはずなのに――たとえ隠れていたとしてもどんな表情をしているかくらいはノクティスにも容易く想像できただろうが。
     「照れるならそもそも話題を振るなっての」
     「はい……すみませんでした」
     消えそうなほどの小さな声でプロンプトはそう言うと床に突っ伏した。
     「キスは恋人同士でやる、って言ってたもんな?……つまり」
     「あー、もうそれ以上言わないで!……友達にそんなこと言われたらもう、いろいろとおしまいなんですけどぉ」
     「――オレは別にキスしてもいいと思うけど」
     「え」
     「恋人同士じゃなくても、ってこと」
     そう言うと突っ伏したプロンプトを、立って、と促すとよろよろと立ち上がったプロンプトの唇に。
    キスをした。
     ノクティスからの突然のキスに感情が追いつかないプロンプトは、とりあえずギュッと目をつぶってそれに応えた。
     唇を離すと、プロンプトは息を止めていたのだろう、息を吐き出すとぺたりと座り込んだ。
     「え、きすしたよね、いま」
     「した。しかもファーストキスってやつ」
     「はじめての、きす」
     プロンプトは自分の唇に指を当てて先程までそこにあった感覚をなぞるようにさする。
     それは、とても温かく柔らかかった。
     ぽかーん、と、していたがしばらくして「今のどう考えてもそういうキスだよね!?」と勢いよくノクティスに聞くが当の本人は、はぐらかすばかりで答えをくれない。
     「じゃ、それさっきのクイズの仕返しってことで。分かんねぇならなんでキスしたか答え探して見りゃいいじゃん」
     「ヒントは?」
     「そうだな、……恋人同士でするもの、って言ってたよな?」
     「もうそれ答えじゃん」
     「ちゃんと答えられたらいいものやるよ」
     「えっ、何くれるの」
     「そこに食いつくのかよ」
     「そりゃ、気になるし」

     今日はキスの日。そんな絶好の言い訳を与えてくれたプロンプトに感謝しながらノクティスはプロンプトの回答を待っていた。
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