毒蛇って結局毒が抜けたらどうなるのか知ってる人いる?同じユニットである以上最悪な結果となった俺とジュンは恋人同士になるという破滅にしか向かわない関係性が追加された。
恋人なんて関係性は不安定なことこの上ないから1番避けたかった、しかも同じユニット内で?ハイリスクローリターンにも程がある。
そもそも?俺はジュンを好きだと言っていないし、なぜバレたのかも分からない。
隠していたはずだったしジュンだって俺のことを好きな様子も………………なかった、はず。
くるくるとボールペンを指で遊びながら深夜の事務所にいるせいで思考が散り散りに放棄されていく。
何杯目かの紙コップに入ったコーヒーを飲み干すと解離した思考が繋ぎ合わされていくのを感じる。
しかも何となく分かっていた。あの愛の使者と言われた漣ジュンが合法的に恋人が出来るとどうなるのか。
「……来たか」
たまに見知らぬ足音が聞こえる日もあるが、エレベーターの到着音の後にキュッキュッとランニングシューズが廊下を蹴る音が静かに響く。
オープンドアからひょっこりと青い髪が覗き込んだ。
「茨ぁ〜?まだ仕事してんすかぁ?明日も早いでしょぉ」
「はいはい、分かってますよ」
数分前に入れたカフェインが意味をなさずに頭の中に霧が生まれた時は早めに帰って寝るに限る。早めとはいう時間ではないが。
机の上に散らばった書類をとりあえず纏めて後は睡眠をとったあとの自分に任せようと机の中に仕舞い鍵をかけた。
この彼……いや、ジュンのお迎え癖にも最初はかなりウザったらしいな、と思ったが今では丁度よく筆が進まない時に来るようになり一緒に帰ることにしている。
これが先ず1つ目の付き合ってからの変化だ。
そして2つ目は帰宅後、付き合う事になってから自分名義のマンションをひとつ契約した。
同じユニットの野郎2人が同じマンションに帰っても変に勘づかれることは無いからその点は良かった。
ただ未だに慣れないことがある。
ジュンだって本来は一人で寝起きしていたはずだしこんなことはしていないはずだ。
付き合ってからの大きな変化は寝る時、一緒に寝てしまうことだった。
最初は別々で眠っていたしあるきっかけ以外で一緒の布団なんて入ったら他人の存在がありありと感じられて背後を取られる感覚が拭えず気持ち悪かった。
1度だけ自分が社長業の方でトラブルが起きてアイドルの方も忙しくほぼ毎夜の徹夜をしていた時、ジュンが限界の来た自分を無理やり引っ張って抱き締めて眠るようになったのがきっかけだった。
「やめろ、気持ち悪い。一人で寝るから触るな」
なんて突っ返した自分にジュンは頑なに離そうとせず、「いいからオレがこうしたいんで」って仕方なくを体良く使って来た。
この日から1年は経つがジュンはずっと自分と一緒に寝ている。
別に今は程よい忙しさで、目が回るほどでもなく1人でちゃんと眠れるというのに。
そんな中、ジュンのドラマが決まりそれに伴い長期ロケが入ることになった。
明治時代の京都にタイムスリップする役なので暫く東京には戻らないので、出発の当日の玄関先でジュンがゴネて全然行かない。
「茨ぁ、オレが居なくてもちゃんと寝て下さいねぇ?約束破ったら寝室にカメラ付けるんで」
「いや怖っ。てか1人でも寝れるんでご心配なく」
「えぇ〜?でも茨はオレが居ねぇと駄目じゃないですかぁ〜」
「そんなわけないだろ、自惚れんな」
「んも〜、素直じゃないっすねぇ、まあそれならいいんですけど、寝る前に連絡しますからね!」
「はいはい、早く行け」
「行ってきます!」
「…いってらっしゃい」
急に、シン、と音が止んだ。
カチカチと時計の秒針が刻む音のみで驚いたが、少し前のジュンと眠る前に戻っただけ、なんの問題もない。
その日の夜、仕事のメールを返し書類を作り終えたのはいつもより早い時間で、たまにはいいか、と普段よりも早めに寝床に着いてみた。
ところが全然寝付けない。書類を作っている時にコーヒーを飲んだせいだ。体は眠りたいとしているのに目だけが冴える最悪な気分。
悪態を付きそうになった時、着信はジュンからだった。
「こんばんは〜っす、茨今何してます?」
「……寝るところです」
「えっ!?はや!?本当に??あの茨が?」
「なんですかそれ。自分だって早く寝る時くらい…」
「いやないでしょ。えぇ?やっぱりオレが居ないと眠れないですかぁ〜?」
電話越しでも楽しそうに上擦った声で調子に乗っているのがわかる。
自惚れるなクソ。
「……えぇ、えぇ!そのようですが!?あなたごとき居なくても問題ありありですけどね!」
「うぉっ、日本語変ですよぉ茨〜。よしよし、まだ先長いですけど寝る前には電話しますね」
「GODDAMN!……自分からも電話します」
「ははっ、よろしくお願いします♪」
それから少し話をして明日に響いても困るので通話を切った途端、俺自身もコトンと寝落ちたようだ。
たかだか半日以上一日未満で離れているだけでこのザマ。
随分あの男に毒されたようだ。