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    nekononora

    94とFGO。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
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    nekononora

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    パーバソワンドロライ
    パーバソ→パー+バソ♀
    前回の続きでお題は過去のものをお借りしました。
    お題:『そんなつもりじゃなかった』『挑発』
    時間:2h

    #パーバソ
    #パーバソワンドロライ

    私と貴方と貴方と私② 昨日、共に寝たはずの体温がない。
     いつもは出来る限り、バーソロミューが起きるまで共にいてくれるというのに。
     書き置きがあるかとナイトテーブルに手を伸ばそうとして、気がつく。
     ここはパーシヴァルの部屋ではない。
     ゆっくりと起き上がり、メカクレのグッズを見つけ、目を細めた。
     ——私の部屋でもない。
     グッズには見覚えがある。見覚えのない物もある。そしてなくなっている物も。一つ一つ大切に角度まで考えて配置しているのだ。間違いようがない。私の部屋を真似たようだが、所詮真似でしかない。
     あぁしかし、この配置もなかなか。グッズもセンスがいい。是非ともメカクレについて語り合いたいものだ。
     そんな事を考え、ふと視線を下にし、流石に思考が一旦止まった。
     部屋着な為、布一枚の上着。胸部分は緩やかに盛り上がっており、それは間違っても胸筋ではなく、女性のそれ。
     つまり女体化。いやまて、まだ、そう断言するのは早い。入れ替わりという可能性もある。
     立ち上がると、姿見まで歩く。
     映し出された姿は、先端が白に抜けたうねりのある黒髪、日に焼けた肌、海のようだと讃えてくれた青い目、そして慎ましやかだが服の下から主張する胸という、バーソロミューの面影を残した女性であった。
    「…………」
     確かに、女性になれたらと思いはした。パーシヴァルにも言った。だからと言って本当に女性になりたかったかといわれれば……まぁなりたかった。ちょっとこの身体で一二発やって、パーシヴァルに女も抱かせてやりたいなどと考えていた。
    「ふむ。この霊基異常……声まで女性だな。そりゃそうなんだが」
     ぶつぶつと呟きつつ、本当にこれは女体化なのかという疑問がわいてくる。
     この部屋だ。
     寝ている間に霊基異常で女体化したというのなら、パーシヴァルの部屋でなければおかしい。なのにバーソロミューの部屋を模した部屋。なぜ模倣する必要が? それとも何か見落としをしている?
     ピースが足りない。そんな感覚。
    「……」
     バーソロミューはある可能性に思いいたり、這いつくばってベッドの下を覗き込んだ。
     ベッドの裏、そこにファイルがガムテープで固定されており、その中に鍵付きの日記帳が入っている。
     この存在を知っているのはバーソロミューだけで、鍵穴に爪でも髪でも血でもバーソロミューの魔力を入れなければ開かない仕様で、無理に開ければ発火して日記を燃やす仕掛けになっていた。
     バーソロミューは髪の毛を一本抜いて、鍵穴に押し込む。カチャリと鍵があいた。日記をパラパラとめくる。自分とよく似た字で、日々の出来事を書き綴っていた。
     それを読み、特にここ数ヶ月分を読み、バーソロミューは隣室に届かない程度の声で、これは言っておかなければという台詞を叫んだ。

    「私たち、入れ替わってるー!!??」

     よし、とゴホンと咳払いをして、ベッドに腰掛ける。
    「うん。OK。女体化ではなく、女性の私と入れ替わった。理解した。この日記からほぼカルデアと変わらぬ事も」
     さて、そうなるとどう動くのが適策で得策か。
     このまま部屋に籠城は愚策であろう。この世界でもパーシヴァルと付き合っているようなので、ドアを破られるし、マスターに心配させればお節介なサーヴァントが動くかもしれない。
     最悪、中に違う精神が入っていると知れ、敵認定されるかもしれない。
    「——となれば、だ」
     バーソロミューは部屋に設置されている端末を操作して、管制室と繋ぐ。
     程なくしてモニターにダ・ヴィンチが現れる。
    『どうしたのかな? バーソロミュー』
     バーソロミューは両手を軽くあげ、降参のポーズをとった。
     開幕から白旗、敵ではないアピールだ。
    「話を聞いて欲しい。まず初めに伝えたいのは、この状態は私の望んだ結果ではないと言う事だ」
    『うん?』
    「なので私には攻撃の意思はなく誰にも危害を加える気はないと意思を表明したい。もちろん、この身体の女性にもだ」
     最後の言葉に、ダ・ヴィンチの表情が引き締まる。
    『モニターを開いたまま少し待ってくれるかな?』
    「あぁもちろん。敵認定されずに話を聞いてくれるだけ僥倖さ。因みに隠し立てして後々、バレた時に面倒な事になりそうなので先に伝えておくが、私は男だ。なのでこの女性の名誉の為にも、モニターでもいい、今後二十四時間体制で監視してもらえると助かる」
     漫画や小説などで、女性の身体に入ったら胸を揉んだり、トイレに困ったりという描写があるが、あれは物語の中だから許されるのであって、現実でやればまぁまぁの尊厳破壊であろう。それに他者に入れ替わりが知られている場合、下世話な想像をする輩は一定数いる。
     まぁ現実で入れ替わりなどそうそう発生しないであろうが。
     バーソロミューがそんな事をつらつら考えながら待っていると、ダ・ヴィンチが困惑した声で伝えてくる。
    『……本当にバーソロミューの身体に別の精神が入っているね……因みに真名を教えてくれたりはするかな?』
    「……すまないが、寝て起きたらこの状況でね。彼女も被害者だとは思うのだが、だからといって100%君たちを信用できない。なので真名は伏せたい……伏せたところで何ができるのかという話ではあるのだがね」
    『うーん、真名を知るのと知らないのでは、分析の幅もアプローチも変わってくるから、知りたいんだよねぇ……貴方も早目に戻りたいだろう? 教えてくれない?』
     教えてもいい。伏せたとして利益はあまりない。とはいえタダで教えるのもなぁという気分である。
     自分の利になるように動きたいところだが、さてどうするかと顎に手をやって下を向き、ベッドに放り投げたままだった日記帳が目に入る。
    『それは?』
    「……女性のプライベートを覗いたのは謝ろう。突然知らぬ部屋、知らぬ身体で混乱もあり、少しでも情報を得ようと必死だったんだ。この身体、バーソロミュー嬢の日記だよ。あぁ、彼女の為に言っておくが、カルデアやストームボーダーについて不利益になる事は書いてはいない」
     もし、万が一に第三者の手に渡って読まれても問題ないように書いていた。私も彼女も。
    「彼女の心情が赤裸々に綴られ、悩みをただ書いて心を整理してるような、」
    『え? ま、待って待って! 誰かパーシヴァル止めてー!!』
    「……ぅん?」
     モニターの向こうがなにやら騒がしい。
    『バーソロミュー! じゃなかった! えぇっと! バーソロミューの中のサーヴァント! 今からそっちに暴走機関車みたいなのが行くと思うけど、ぜっっったいにドア開けないで!』
    「ひょっとして、日記にあった“シロクマくん”かな?」
     因みにバーソロミューの日記でもシロクマくんである。
    「彼女の日記でもあったが、年下とは思えぬほど理性的で紳士的。嫉妬心や独占欲もなくという彼だろう? 話し合いでなんとでもなるだろう」
    『めっちゃ嫉妬心や独占欲まみれだからー! 気づいてないのバーソロミューだけだからー!! トリスタンですら、『ちょっと怖い』とか竪琴鳴らすほどだから!! 彼女のシークレット・ガーデンに他の男が触れたってなったら、円卓総出で止めないといけないとからー!!!! って、間に合わなかった!!』
     ダ・ヴィンチの言葉に重なるように、ドアが弾け飛んだ。
     中央部分がへしゃげてくの字になり、外側から弾き飛ばされたドアは、部屋の壁にぶつかって床に落下した。
     その風圧で髪を靡かせつつ、重みのある音を聞き、バーソロミューは呆然と入ってきた騎士を見上げた。
     え? なにをしたんだろう? 殴った? それともタックル? そういや某キャメロットでガウェイン卿が石壁タックルで粉砕してたっけ。ドアや壁破壊は円卓のお家芸かな。怖い。
     殺気すら纏った重量級の騎士の圧に晒され、バーソロミューはヤバイと口を手で覆った。
     そんなバーソロミューの様子に気づいてか気づかないでか、パーシヴァルはゆっくりとベッドまで歩くと日記帳を取り上げる。
     そうして殺気を霧散させると、バーソロミューを振り返って、口角を上げた。
    「貴方を監視する事になったパーシヴァルといいます。彼女が戻ってくるまでの間、貴方から一秒たりとも目を離す気はないで、よろしくお願いしますね」
     口元は笑っているのに目は全く笑っていない。
     芯から冷えてしまいそうな目に、バーソロミューは口元を覆った手の下、すでににやけそうになっている口元を頬に力を入れてなんとか正常に戻す。
    「あ、あぁ、よろしく頼むよ」
     それを言うのが精一杯。
     不思議になほど、初めからパーシヴァルの好感度は高かった。こんな海賊になぜ? と思うほど。
     だからこんな目を向けられた事がない。
     自分のパーシヴァルではないが、いや自分のパーシヴァルでないからこそ、向けられた殺気に、正直、興奮してしまった。
     日記の話を出した時点ではそんなつもりじゃなかった。本当に、本当にだ、そんなつもりではなかった。
     だがこれは、適度に“バーソロミュー”関連で挑発した方が楽しめるのでは? と、混沌悪が囁いてくる。
     少し、そう。ほんの少し試すだけだからと、バーソロミューは口を開く。
    「日記は人物名は伏せられていてね。君が手を出してくれない“シロクマくん”であっているだろうか?」
    「…………貴殿も突然の事で混乱している。質問をして心を落ち着かせたいのは理解できる。だがこんな時だからこそ、口にする前に愚かしい問いになっていないか自問してみては?」
    「……」
     冷たい響きに切れ味のある言葉。
     それが私ではないが“バーソロミュー”の為である事に、今まで知らなかった扉が開いた。
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