1歩ひらひらと、雪の華の舞う景色を見た。
1面の白色に、平衡感覚がおかしくなる。
足の裏の感覚を頼りに、1歩を踏み出す。
そこに残されるはずの足跡も、そう間をおかずに白に消えた。
ただただ1面の白に、なにかに抗うように歩みを進めた。
どれほど歩いただろうか。
脚にまとわりつく疲労を感じなければ、自分が歩いてきたことすら曖昧になってしまいそうで。
ひたすらに脚を前に押し出した。
白の中に色が挿した。
赤。
まだ、生まれたばかりの赤。
白とは不釣り合いなそれは、じわり、じわりと広がってゆく。
上から降り頻る白をも染めて。
足を踏み出す。
グチャリ
赤が飛び散る。
グチャリ
白が染る。
グチャリ
足を染める。
グチャリ
服を染める。
グチャリ
心を。
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