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    huyuki_sakura

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    huyuki_sakura

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    Twitter君に貼るのははばかられる気がしたのでこっちに
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    1歩ひらひらと、雪の華の舞う景色を見た。
    1面の白色に、平衡感覚がおかしくなる。
    足の裏の感覚を頼りに、1歩を踏み出す。
    そこに残されるはずの足跡も、そう間をおかずに白に消えた。
    ただただ1面の白に、なにかに抗うように歩みを進めた。
    どれほど歩いただろうか。
    脚にまとわりつく疲労を感じなければ、自分が歩いてきたことすら曖昧になってしまいそうで。
    ひたすらに脚を前に押し出した。
    白の中に色が挿した。
    赤。
    まだ、生まれたばかりの赤。
    白とは不釣り合いなそれは、じわり、じわりと広がってゆく。
    上から降り頻る白をも染めて。
    足を踏み出す。
    グチャリ
    赤が飛び散る。
    グチャリ
    白が染る。
    グチャリ
    足を染める。
    グチャリ
    服を染める。
    グチャリ
    心を。
    グチャリ
    視界を。
    歩みを止める。
    辛くなって瞼を閉じた。
    夢なら覚めろ。
    夢なら覚めて。
    絡みつく赤が、燃えるような赤が。
    飲み込んでゆく。
    僕は…………………………



    手を引かれる。
    真っ赤な世界でそれでも確かに僕の手を引く何かがある。
    背中を押される。
    荒々しく何度も何度も、勇気づけるように力強く。
    炎が揺れる。
    ただ前を向くのだと行先を示すように。
    遠吠えが木霊する。
    お前は独りじゃないのだと。
    旋律が流れる。
    湿った足音をかき消すように。
    赤が徐々に薄れてゆく。
    まるで大蛇が飲み込むように。
    自分の姿が鏡に映る。
    そこに赤はなく、泣きそうな顔をした情けないやつが1人。
    周りには誰もいない。
    確かに感じるのに。
    彼等は鏡には映らない。
    見えない誰かの手を強く握る。
    確かに感じられた感触は、殆ど残っていない。
    背中を叩く手は今は添えられているだけ。
    流れる涙を温かく柔らかいものが拭う。
    ごめん、ありがとう、大丈夫。
    涙を拭い前を見る。
    鏡に映る自分は、とてもとても情けない顔をしているけれど。
    あの温もり達に、胸を張れるように。
    確かに、しっかりと、足を上げて。




    1歩を、踏み出した。
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