嘘じゃん 疲れた。本当に疲れた。十二時間続いた撮影に、体力も気力も限界だった。
大河のキャストに選ばれた時は、そりゃもう嬉しかった。弱小プロダクションにいた私がお茶の間に知られるようになったのはつい最近のことで、「埋もれてた才能」なんて嬉しくない呼称が、ようやく「実力派」という冠を得るにふさわしい機会だったから。
主役ではないものの、かなり重要な役柄。オファーがあったときはマネージャーと「やばー!」と歓声を上げた。
でも、さすがは国営放送。時代考証を綿密に行ったセットや衣装は拘り抜かれていて、入りから撮影終わりまで余裕で半日以上の拘束。下手したら早朝入ってテッペン解散は当たり前。キャストも錚々たるメンバーだから、私のような若手は大御所の出番待ちに付き合わされることも多い。
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