ざらついた風に混じったガラムマサラの匂いが鼻をつく。長い道中の終わりが見えるようで、アシームの頬が緩んだ。街に着いたらひとまず、スパイスのよく効いたラップサンドでも頬張りたいところである。
腹の虫が目を覚ます中、アシームは今日のショーを思い返す。満員御礼も過言でない賑わいと喝采の大きさは嘘偽りなく、マジックの出来への賛辞を物語っていた。目立った粗もなく演目を終えた頃には、すっかり得意げに胸を張る主ことシャバーンの姿があった。流麗にマジックをこなせた事に加え、シャバーンの饒舌で調子のよい語り口も功を奏したのだろう。客の反応は、マジック抜きにしても上々であった。
「お疲れさまでした、シャバーン様! 次の街にはもう移動しますか?」
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