まだ未定 一台の車が山道を走っていた。周囲は木々のざわめきと蝉の鳴き声に囲まれており、都会の喧騒とはかけ離れている。深緑色の樹葉は日の光によって碧緑に輝いている。そこから零れ落ちる木漏れ日は、僕らが通る道を自然の幾何学模様で彩っていた。周囲の景色は殆どが背の高い杉林だったり雑木林で、あまり面白みはないというのが正直な感想だ。時折、ところどころ利久鼠色に覆われているガードレールの先に小川が目に入るがそれだけだ。
そろそろ小腹が空いてきたな、とハンドルを切りつつ思案していると、口元に菓子が運ばれてきた。助手席のミゲルにお礼を言いつつ、そのままいただく。僕が好きなチョコレート菓子だった。糖分が脳にしみる。
「お前、これ好きだろ?」
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