わずかに空いたカーテンの隙間から、月の光が漏れている。
平之丞はうっすらと目を開けると、視線を彷徨わせた。
隣には暖かな感触。
平之丞は彷徨わせていた視線をそちらへと向ければ、漏れる月明かりに照らされて最愛の弟——音之進が静かな寝息を立てていた。
おやすみ、と別れた時には自室に行ったはずの音之進だったが、きっと夜中に目覚め独寝が寂しくなったのだろう。
兄を起こさぬように、こっそりと部屋に忍び込みベッドへと潜り込んだであろう音之進の姿を想像し、平之丞はきつく寄せていた眉根をわずかに緩めた。
平之丞は額にかいた汗を拭うと、その柔らかで暖かな温もりに手を伸ばした。
小さい子供特有のふくふくとした頬には涎が垂れ、幸せそうな顔で眠っている。
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