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    創作するメルお兄さん

    @Mel_Sera_XIV

    FF14うちのこ創作
    アレックスとセラフィタという、うさお夫婦の物語+α

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    POIPOI 12

    遺跡のトラップを踏んだセラフィタが消えてしまい、その代わりにセラフィタとそっくりな容姿をした幼いヴィエラの双子たちが現れ、アレックスは『パパ』と呼ばれ育児をすることに・・・

    ※11.23(改訂版)

    #AxS_story

    #FF14うちよそ創作
    #FF14うちの子創作
    ff14OurChildCreation
    #AxS_story
    #vieras_tale

    双子の娘たちとアレックスの物語 突然の出来事だった。
     遺跡の調査途中、セラフィタが何らかの魔法装置を起動させてしまい、その姿があっという間に煙の中に包まれてしまう。
     
    「セラちゃん……!」

    「こっち来るなアレックス!!」

     もうもうと立ち上る煙に視界を阻まれ、セラフィタの側まで進むことができない。
     苦しげに呻く声がしばらく聞こえていたが、それすら途絶え安否がわからない。

    「セラちゃん!セラちゃん……!無事なの?返事をして……!」

     ようやく煙が霧散し視界が開けてくると、そこには見慣れたセラフィタの姿はなかった。
     代わりに10歳前後の幼いヴィエラの子供が二人、ちょこんと座り込んでいる。
     双子のように見えるその子らは、セラフィタとそっくりだった。

    「……セラちゃん、なの?」

     二人のうち片方の前に跪きながら問いかけると、満面の笑みで抱きついてくる。

    「ママだと思った?うふふ!わたし、ソロルだよ~~。パパ!」

     ママ?パパ?
     混乱するアレックスに抱きついてくる『ソロル』。
     そしてそれを見てもうひとりも、ぷんぷん怒りながらしがみ付いてくる。

    「ずるいよ!いっつもソロルばっかりパパに甘えて。パパはソニアのものなんだよ!」

     ソニアにソロル、その名前には聞き覚えがあった。
     どちらもセラフィタの幼名だ。
     顔立ちはセラフィタと瓜二つだが、ふわふわとした緩いカールの毛先はアレックスの髪質に似ている。

    「ちがうもん!ソロルのパパだもん!ソニアなんか大嫌い!!あっち行ってて!」

    「ねえ、パパ!ソニアのほうが大事でしょ?そうだよねっ?!」

    「ソロルのほうが大事って言って!!」

    「「ソニアとソロル、どっちが一番好きなの?ねえ、パパ!!」」

     目の前に現れた子供たちに引っ張りだこにされて困り顔になるアレックス。
     妻のセラフィタは消えてしまい、その代わりに自分を『パパ』と呼ぶ子供たちが現れた。
     まるで突然、双子の娘が出来てしまったかのような……。

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     その日からアレックスの育児生活が始まった。
     昨日までいなかったはずの娘たちが家におり、当たり前のように食卓を囲んでいても違和感がない。
     子供が産まれた記憶も無いのに、どうしてだかこの子たちの事を赤ちゃんの頃から知っていたような不思議な感覚だ。
     強気でせっかちなソニア。
     甘えん坊で欲張りなソロル。
     二人の娘たちはそれはそれは愛らしく、天使のような美少女だったが。
     つまらない事でしょっちゅう仲違いばかりして、髪を掴んだり顔を引っ叩いたり、取っ組み合いの大喧嘩を一日中しているような子らだった。
     そして二言目には「パパは、ソニアとソロル、どっちが大事なの?」と困らせるような質問をして、「どっちも大事だよ」と答えれば、「どっちか一人だけ選んで!!」と常にアレックスの愛情を独占しようとする。

    「今日のおやつはケーキだよ」

     大きな苺が乗ったショートケーキを出すと、目を輝かせて席につくが。
     自分のお皿の上にあるケーキの苺を、様々な角度から観察し。

    「……ソニアの苺の方がおっきい。ずるい」

    「ソロルの苺のほうが赤くて甘そう……。いいなあ」

     なら交換しなさい、とアレックスが言うと、やっぱりこれでいいとしぶしぶ納得する。
     好物は一番に食べるソニアは、一口で苺を頬張ってしまい、ケーキのクリームを先に食べてカステラだけが残っている状態だ。
     好物は最後の楽しみに取っておくソロルは、つやつやの苺を満面の笑顔で眺めながら、丁寧に外側からケーキをゆっくり味わって食べている。
     ソニアの視線は既にソロルの苺を、じぃ~~っと穴が開くほど見つめている。
     ソニアのフォークが伸びてきて、素早くソロルの苺をぷすっと突き刺すと、あっという間に食べてしまった。

    「きゃあああああ!!ソロルの苺ッ!ソニアに食べられたああああ!!」

     耳をつんざくような甲高い悲鳴に、アレックスは「またか」と溜め息をつく。
     ソニアは食い意地が張っていて、人の食べ物を平気でつまみ食いするのだ。

    「ソニア。どうしてソロルの苺食べちゃったんだい?自分のはもう食べたでしょ?」

    「だって!いつまでも食べないから、いらないんだと思ったんだもん!!」

    「違うもん!最後に食べるために大事に置いといたの!!楽しみにしてたのに!ひどい!バカ!!最悪!!最低!!」

     そしてわんわんと大泣きしてしまう。

    「ソロルにはパパの苺あげるから……もう泣くのはやめなさい」

    「え~~ん、パパぁ」

    「ソニアは、ちゃんとソロルに謝りなさい。わかったね?」

     アレックスの胸に縋り付いて泣いているソロルを見て、ソニアは目を吊り上げて怒る。

    「そうやって、いっつもいっつもソロルばっかり贔屓にするんだ!パパはどうせソニアの事なんかどーでもいいんでしょ?!わたしよりソロルのほうが可愛いんでしょっ?!ふーんだ!」

     そう言って拗ねてしまう。

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     ある日、雑貨屋でぬいぐるみを買った。
     ソニアは、ピンクのネコちゃん。ソロルは、きいろのネコちゃん。
     それぞれ自分の好きな色を選んで納得して購入したはずなのだが……。
     家に帰るとソロルが、「やっぱりピンクのネコちゃんが欲しかった」と言って駄々をこねる。
     そしてひとつしかないピンクのネコちゃんを取り合っているうちに、ネコちゃんは破れてしまった。

    「きゃああああああ!!ソニアのネコちゃんッ!!千切れちゃったよう!!うえぇええん!!!!」

     お腹から綿がこぼれて裂けてしまったネコちゃんを抱きしめてソニアが大泣きしている。

    「ちょっとだけ貸してって言っただけなのに!ソニアがすぐ貸してくれないからいけないんだからね!!ソロルは悪くないもん!」

    「ソロル、どうしてきみはいつもソニアの持ってるものばかり欲しがるんだい?自分のもらったものはすぐ飽きてその辺に放り出すくせに、ソニアが大事にしてる玩具を取り合って壊してばかりだね」

     二人にはいつも同じものをお揃いで買うようにしている。
     なのにソロルは、ソニアが持ってるもののほうをいつも欲しがっていた。

    「ソロル。ソニアに謝りなさい。パパと一緒にネコちゃんを直そう。ね?」

     床に散らばった綿を拾い集め、裁縫セットを持ってくるが、ソロルは首を横に振って否定する。

    「……嫌よ!だって、ソニアだけずるい。ソニアの名前はママの幼い頃の本名でしょう?でも『ソロル』って帝国語で『姉妹』って意味じゃない!ソニアは生まれた時から特別で、ソロルはおまけ。いつも二番目で、一番になれない」

     たしかに帝国に居た頃、セラフィタの戸籍上の名前は『ソニア』といったらしい。
     しかし人生の大半では『ソロル』という愛称のほうで呼ばれたことのほうが多く、本名を使用することはほとんどなかったはずだ。
     そういう意味では思い入れのある名前は、ソロルという愛称のほうだろう。

    「そんなことないよソロル。二人とも平等に大切だよ。どっちが一番なんてないよ」

    「嘘つき!ソロルは最初から、いらない子なんでしょ!本当はソニアだけいれば良いんでしょっ?!……ふえぇええん」

     結局ソロルまで大泣きして、二人を抱きかかえてなだめねばいけない羽目に。

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     またある時は、夕食のメニューで頭を悩ませた。
     何が食べたい?と聞いたら、ソニアはハンバーグと言い、ソロルはオムライスと言った。
     じゃんけんして、今日はハンバーグで、明日はオムライスにしようねと決めた。
     笑顔でハンバーグを頬張るソニアの隣で、ソロルは不満そうな顔のままだ。

    「オムライスは明日作るって約束したよね?今日はハンバーグを食べよう、ソロル」

    「はあい……」

     気のない返事をしてしぶしぶ食べようとしていたら、やっぱり横からソニアが出てきてハンバーグをつまみ食いしていった。

    「ちょっと!ソロルのハンバーグ食べないで!」

    「だって食べたくないんでしょ?食べてあげるよ」

    「食べるもん!ハンバーグも大好物なのに、なんでいつも勝手に食べちゃうの?!信じらんない!」
     
     そして翌日には約束通り、ドードーの卵で作ったふわふわのオムライスにケチャップで名前を書き、いただきますの挨拶もしたけれど……。
     二人ともなかなか食が進まない。

    「どうしたの?ソロルはオムライスが食べたかったんでしょ?」

    「昨日はオムライスの気分だったけど……、今日は違う気分なの」

    「ソニアも今日はオムライスの気分じゃない~」

    「……じゃあ、今は何が食べたいの?」

     アレックスが問うと、二人は声を揃えて「カレーライス!」と言った。

    「パパ、カレーライス作って!ハンサのお肉がいっぱい入ったやつ!」

    「辛くないやつにしてね!ココナッツミルクが入ったバターハンサカレー!」

     目の前のオムライスに手を付けないまま、カレーライスが食べたいから今から作ってとおねだりする娘たちに、ついに堪忍袋の緒が切れた。

    「いいかげんにしなさい!!二人とも!」

     いつもは声を荒げないアレックスが、テーブルをバンッと叩いて大声を上げたので、二人はビックリして固まっていた。

    「いつもいつも、喧嘩ばっかり、わがままばっかり。お食事を作っても、違うのが食べたいって言うし。パパが君たちのお世話をするのにどれだけ苦労しているかわかる?」

     口より先に手が出るので、ケンカをするたび服が破れる。
     椅子を投げて壊したり、壁に穴が空いたりするほど壮絶だ。
     買い物に出かけるたびに、あの玩具が欲しい、お人形が欲しいと駄々をこね。
     せっかく買ってあげたプレゼントもすぐに飽きて興味を失い、次はあれが欲しいこれが欲しいと要求ばかり。
     食わず嫌いや好き嫌いも激しくて、野菜は残すし、欲しいおかずは取り合いになる。
     いつもお腹を空かせていて、ごはんはまだ?おやつ食べたい。やっぱりいらない。これは気分じゃない。
     夜は寝ないし、朝は起きない。玩具は片づけない、服は脱ぎっぱなし。歯磨きはしないし、お勉強も嫌がる。
     一日中ぎゃーぎゃーと大声を上げて、ドタバタ家の中を走り回るし。まるで動物園だ。
     提出期限のあるレポートを抱えながら、一人で育児をするのは骨が折れた。

    「パパはもう限界だよ……。こんな時、ママがいてくれたら」

     そう言って、アレックスの目から涙がこぼれる。
     セラフィタ。どこへ行ってしまったんだろう。

    「……とにかく、出されたごはんはちゃんと最後まで食べなさい。いいね?」

     しゅんと落ち込んで耳を伏せている二人を食卓に残して、アレックスは書斎にこもった。
     机の引き出しからリンクパールを取り出す。

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

    「もっと早く連絡くれてたら飛んできたのに!困ったことがあったらいつでも相談しなさいっていつも言ってるでしょう?」

    「一人で問題を解決しようと背負い込むのは、昔からおまえの悪い癖だぞ、アレックス」

     翌朝一番でアレックスの養父母が家を訪れた。
     両手に一杯のお土産をかかえて。

    「おばあちゃまとおじいちゃま、はじめまして!とっても会いたかったわ」

    「ソニアとソロルのおうちにようこそ!お花もいっぱい飾ったのよ」

     朝からおめかしして、初めて会う祖父母を元気いっぱい歓迎する二人。
     
    「あらあら!なんて可愛い女の子たちなの。孫の顔が見れておばあちゃま幸せよ」

     養母のアディティは孫娘たちを代わる代わるハグして髪を撫でた。
     アウラ・レンの彼女は小柄で、ソニアやソロルと並ぶと背丈がさほど変わらない。
     養父のホルスクロールはルガディン族で、親子の血の繋がりはない。
     しかしアレックスにとっては故郷の集落の実母や姉よりも、この家族が本当の家族だと思っていた。
     養父母はここ数年間アポリア本部に居たので、最近までしばらく音信不通の時期があり、大人になってからは頼ることすら思いつかなかったのだ。

     午前中は家で一緒に食事をしたり会話を楽しんで、午後からアディティと子供たちは出かけていった。
     騒がしさが一気になくなり、養父とアレックスの二人だけになると、部屋が広々として見えてこんなに静かだったかと驚く。

    「ずいぶんと疲れているな、アレックス。夜ちゃんと眠れてないだろう」

    「正直、あんまり……」

     笑顔を見せ気丈に振舞うが、目の下にクマが出来てすっかりやつれている。
     日中は家事や育児で手一杯で、夜子供たちを寝かしつけた後に破れたぬいぐるみを修繕したり、研究論文を書いたりしている。

    「僕はずっとセラちゃんとの間に子供がいれば良いなって思っていたけれど、いざ目の前にすると可愛いだけじゃなくて、本当に大変で大変で……」

     あの子たちの事を心から愛しいと思っていても、時々むしょうに腹が立ったり悲しい気持ちになることも多い。

    「そりゃそうだ。心から愛してる相手なら何でも許せるわけじゃないし、我が子のためなら疲れなんて感じない……なんて都合のいい話があるもんか。親だって人間なんだ。疲れるし怒りもするさ」

    「僕の時もそうだった?良い子にしてたつもりだけど」

    「おまえは聞き分けが良くて利口な子だったから、育てやすい方だったかもしれん。だが、人一倍好奇心が強い子でな。入っちゃいけないと言われた場所に入るし、危険な生物にも怖いもの知らずで近づくし。高い場所に登って皆を冷や冷やさせたり……大変だったんだぞ?」

    「本当に?覚えてないよ、そんなこと」

     だが禁書庫があれば開きたいと思うし、前人未到の遺跡と聞けば発掘したくなるのは今も同じで、子供の頃もそんな調子で探検ごっこをやっていた記憶はうっすらある。
     ラヴィリンソスに行っては、あえて昇降機を使わずに、坑道の中を歩いてミディアルサーキットへ降りたり。
     動植物の観察に夢中になっていたらすっかり日が暮れており、大人たちが総出で自分を探し回っていた……なんてことはあった。

    「僕はあの子たちをしっかり育ててあげたいと頑張ったけど、ぜんぜん上手くいかなくて……頭の中ではセラちゃん助けて、っていつも思っていたよ」

     セラフィタならどうするだろうか?
     アレックスのように優しく諭したりせず、双子たちの頭に容赦なくゲンコツを落として、「うるせえ!いいからいう事聞け、ガキども!」と豪快に叱っていそうだ。
     正しくはないだろうが、あの猛獣みたいな双子を従えられるのはセラフィタくらいのものだと思った。
     そもそもあの双子自体が、ちいさなセラフィタそのものだ。

    「セラちゃん……セラフィタの行方は未だにわからないんだ。でもきっとどこかで無事でいるような気がする。姿は見えないけど、ずっと近くにセラフィタを感じる」

     双子たちに聞いても、ママの居場所は何も知らないらしい。
     だけど、「ママはとっても怖い。だけどママのこと大好きよ」と言っていたから、この子たちはどうやらセラフィタの子で間違いなさそうだ。
     もしかしたら時間魔法で未来から訪れた本当の子供たちなのかもしれない。

    「お茶を飲んだら、眠りなさいアレックス。今夜は我々があの子たちの面倒をみよう。明日もあの子らを連れてどこかへ遊びに行くから、たまには一人でゆっくりするんだ」

     しかし、シンクの中にはまだ洗っていない食器がつけてあるし、風呂場にも子供たちが食べこぼしで汚した服が桶に入っている。
     リビングも片付けていない玩具が散乱して足の踏み場もない。

    「それは私がやっておくから、今は休養することが仕事だよ」

    「でも……そんなの悪いよ」

    「私たちは、おまえの親なんだぞ。いくつになっても、おまえの面倒をみたいのさ」

     そう言われて、言葉に甘えて休むことにした。
     ベッドに入ると泥のように眠気が襲い、熟睡してしまう。
     アレックスが眠っている間に、ホルスクロールは家の中をテキパキと片付けてくれた。
     翌日からアディティとホルスクロールは、双子たちを連れて二泊三日の旅行へ出かけた。
     たっぷりと睡眠をとり、オーケストリオンで好きな曲をかけながら読書に没頭する。
     丸二日も自由な時間を与えられると、最初は羽根を伸ばして楽しめたが、やはり夜になるとあまりに静かで寂しくなった。
     毎晩、両脇にソニアとソロルがぴったりとくっついて、身動き取れないほど暑苦しい。
     どっちがパパの右で寝るかとか、そんな事ですぐケンカしたり、パパが寝返りを打って反対を向くと「私のほうだけ見て!」と無茶を言われたり。
     一人寝で広いベッドを占領していると、そんな日々がとても愛おしくて早く娘たちに会いたくなった。

    「二人ともとっても可愛くて、お洋服をたくさん買いすぎてしまったわ。どれを試着しても似合うんですもの」

     旅行から帰ってきたアディティは子供服の入った紙袋を持ちきれないほど下げている。
     ホルスクロールは両腕にそれぞれ子供たちを抱っこしていた。
     ソニアもソロルも、はしゃぎ疲れたのかすやすやとよく眠っていたので、そのままベッドに寝かせた。

    「どうする?この子たち、シャーレアンに連れ帰って私たちで預かりましょうか?」

    「ううん。これからもずっと僕が面倒見るよ。たった二日離れていただけで、心配で寂しくて早く会いたかった。大事な大事な僕の娘だからね」

    「そうね。この子たちも旅行の間ずっとパパのお話していたわ。もしまた困ったことがあったら私たちをすぐに呼びなさいね。大切な息子と孫娘のためならすぐに駆け付けるわ」

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     ソニアとソロルを連れてのお出かけは大変だ。
     コートとミトンはお揃いが良いというくせに、髪飾りは同じものは嫌、タイツも別々のが良いとこだわる。
     なるべくお揃いのコーデにしたいけど、細部で差を出したいらしい。

    「だってパパが、わたしたちを見分けられなくなったら大変でしょ?」

    「二人が同じ服を着てても、パパにはすぐにわかるよ」

    「本当~?」

    「本当さ」

     守護天節が終わったと思ったら、街はもう星芒祭の飾りつけが始まっていた。
     街角の大きなツリーを見てはしゃぐ二人。
     
    「パパ!早く来て!こっちよ、こっち!」

    「見て~!素敵な飾り付け」

     たくさんのオーナメントがぶら下がったツリーや、家々のドアのリース、イルミネーションの美しさを眺めながら、商店街を歩く。
     ひときわ目立つショーウィンドウの前で、二人の足が止まった。
     積み上げられたプレゼントボックス。星芒祭のポスター。赤い外套を着たぬいぐるみが飾られている。

    「ソニア、あのお人形が欲しいな」

    「ソロルも同じの欲しいよ」

     目を輝かせて商品を見つめている二人に、苦笑しながら考え込むアレックス。

    「良い子には、星の聖人様がプレゼントをくれるよ。……でも、君たちはいつもケンカばかりでパパを困らせてるからなあ……プレゼントあるかなあ?」

    「良い子にするわ!もう絶対にソロルとケンカしないもん」

    「ソニアと仲良くする!もう玩具壊さないし、好き嫌いせずにご飯も食べるから……」

     そっくりな顔で、「だいすきよソロル」「だいすきよソニア」とぎゅーっとお互いをハグしていた。
     イルミネーションで飾られた広場で、買ったフライドチキン。
     ソニアはソロルの口元にチキンを運んで食べさせていた。

    「おいしいねえ」

    「おいしいねえ」

     二人仲良くチキンを頬張る姿を見てアレックスも微笑んだ。

     帰宅してみんなでお風呂に入り、就寝準備が済むとベッドで寄り添う。
     いつも通りソニアとソロルにぎゅっとくっつかれて苦しいが、幸せなぬくもりだ。

    「ソニア大きくなったらパパとけっこんするんだ」

    「パパとけっこんするのはソロルだよ!約束したもん」

    「違うよ!パパ、前に言ったもん!ソニアのことお嫁さんにしてくれるって……」

     またいつものケンカが始まってしまいそうだったが、娘たちをたしなめるアレックス。

    「パパは、ソニアともソロルとも結婚できないよ」

    「嘘!ソニアはパパのお嫁さんになるんだもんっ」

    「ソロルもパパのお嫁さんになるんだもんっ」

    「パパのお嫁さんは、ママだけだよ。だってママのこと世界で一番愛しているからね」

     そういうと二人は顔を見合わせて高い声で笑った。

    「じゃあ仕方ないね」

    「ママには勝てないもんね」

    「ソニア、今日はソロルの隣で寝る」

    「ソロルもソニアとくっついて寝る」

     いつもはアレックスを挟んで大の字になっていたが、二人はお互いをぎゅーっと抱きしめたまま眠ってしまった。
     すやすやと穏やかな寝顔を見守り、幸せな気持ちに包まれる。

    「おやすみソニア。おやすみソロル」

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

    「……あれ?」

     やけに重たい頭で目を開くと、そこはいつもの家のベッドだった。
     もう朝だ。いつの間に眠っていたのだろう。
     さっきまで娘たちの頭を撫でていたはずなのに。
     
    「やっと起きたか?アレックス。昨夜から、揺すっても叩いても、全然目ぇ覚まさないから心配したんだぜ」

     ざらりとしたハスキーボイスの低い声が耳を撫でる。
     至近距離からセラフィタの涼やかな目で見つめられていた。
     どうやらセラフィタに腕枕されて、包み込まれるように熟睡していたようだ。

    「昨夜から……?」

    「あの遺跡の中で変な煙を浴びてから、おまえを見失って焦ったぜ。ようやく見つけたと思ったら、ぜんぜん起きやしねえし」

    「いなくなったのはセラちゃんのほうでしょ?僕はずっと君を探していて、娘たちと……」

     ぼんやりとしていた頭が覚醒してくるにつれて、セラフィタがいるこっちが現実だと理解してくる。

    「……そうか、あれは全部夢だった、のか……?」

    「すいぶん楽しそうな夢見てたみてえだなあ。呻いたり笑ったり、寝言も言ってたぜ」

    「本当に?僕、なんて言ってた?」

    「教えねえ……クククッ」

     すぐ側にセラフィタがいることに安堵して、強く抱きしめた。

    「会いたかったよ、セラちゃん。大好き愛してる」

    「まだ寝ぼけてやがるのか?……うん。俺も愛してるぜ、アレックス」


     ■ END ■
     
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