だーりんはにー夕方、仕事が早く終わった里崎はリビングでテレビを見ているシェーンに声をかけた。
特に見たい番組もないらしく20秒程度で次のチャンネルに切り替えていた。相当暇だろうから一緒に遊びたい気分でもあった。
「ねえシェーン、僕のことダーリンって呼んでみてよ」
「ダーリンどうした急に」
「普通に言うんだ…、普段言ってくれないのに」
「…何の話だ?」
夜、里崎が帰るころにはシェーンはベットに入っている。物音で起きたシェーンはたまに「おやすみ、マイハニー」と言ってくれるのだがダーリンと呼ばれたことがないのが引っかかっていた。
「なんだそんなことか」
「そんなことって…僕には大事なことなんだよ」
「ダーリンもハニーも一緒じゃないか」
「違うんだよ、僕にとっては!ダーリンが男でハニーが女なんだよ」
「じゃあ俺たち両方ともダーリンってことか…?」
「そうなる…いやそうならない、シェーンがハニーだよ」
「なんでだ?」
「うーん…なんとなく?」
チャンネルを変える手を止めてシェーンは神妙な顔をした。
「女がハニーって言われた直後に俺がハニーってのもなんかあれだな」
シェーンは当たり前だが自分の容姿を分かっている。可愛いとも綺麗とも無縁で女性らしさは皆無だ。
「僕にとっては可愛いからいいんだよ」
「そういう問題なのか?」
「そういう問題。あ、小腹空いたからピザ食べよ、レンチンしてくる」
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ピザを片手に戻るとシェーンはjojaコーラ片手にニュース番組を見ていた。さっき止まった番組がニュースだったらしい。
「はいこれシェーンの分」
「ああ、ありがとさん」
「そいやシェーンjojaコーラ嫌いじゃなかった?ジンジャーエールあるよ」
「なら貰う、jojaコーラ安いけど不味いんだよな、飲みかけ要るか?」
「折角だし貰っとく、これは間接キスだ」
「返せ」
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ニュースでは来週スタデューバレーで開かれるマス釣り大会を知らせていた。
「里崎は今年も釣りに行くのか?」
「マスのスープって美味しいよね」
「そうだな」
部屋の隅に立てかけてある釣り竿をシェーンが一瞬見たのに気付いた。
「良かったらシェーンもどう?」
「俺釣りなんて出来ないぞ」
「意外とうまくいくかもだよ、自分で釣った魚は美味しいし…ゴミも結構使い道あるからやるだけ損はないよ」
「それなら…少しだけやってみるか」
「その台詞を待っていた!!その竿、シェーン用に買ったやつだから好きに弄っていいからね」
シェーンが竿を取って見る。傷一つない綺麗な竿…よく見たらテグスもルアーも床に置いてあった。
「僕が使ってるやつと一緒の型だよ、買える中では一番いいやつ、て聞いたんだけどどうかな?」
「ああ、いいんじゃないか?色が紫な所とか」
「まあイリジウムだからね!気に入ってくれてよかった」
釣り竿を置いたシェーンがソファに戻る。
そしてソファの空いてる方の背もたれを叩きながら言った。
「来週楽しみだな、ダーリン」
「あ、うん!いっぱい取ろうね、ハニー!」
「…なんか、気恥ずかしいな」