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    アクアマリン

    @marine_ttmy286

    あんスタに爆速で沼った雑食人間です。よろしくお願いします。

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    アクアマリン

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    巽マヨがかめぱんかじってるシーンの妄想からここまで膨らみました。
    こっちは文字版です。

    わくわくトリップ! ――五月上旬、星奏館共有ルーム
     Crazy:Bとの合同イベントを終え、イベント前後のひと騒動が落ち着いたある日のこと。
    「イベントの疲れをしっかり取るため休養をとりなさい」という天祥院さんのお達しで私たちは一週間ほどのオフを頂いていた。せっかく頂いたまとまったお休みを存分に楽しもうということでALKALOIDのみんなで京都に二泊三日の旅行に訪れることになった。宿と往復の新幹線は藍良さんから話を聞いた天祥院さんが手配してくれたものらしい。お休みだけでなく旅行の方にまで手を回してくれるなんて、本当に彼には頭が上がらない。


     そして迎えた旅行の出発日。四人で新幹線に乗り込み、荷物棚にカバンを置く。せっかくの旅行だからということで座席を回転させて四人で向かい合う形で席に着く。発車後の車両で旅行の間に行きたい所の相談や先日のライブのこと、サークル活動についてたくさんお話しした。お昼ご飯代わりに購入していた駅弁を互いにシェアしながら富士山を眺めたりとても楽しい時間を過ごした。

     京都についた私たちは一度旅館へと向かい荷物を預け、散策へと向かった。初日は嵐山方面の散策をすることはこの旅行が決まった時に全員で決めたものだった。
     先日スタプロと交通会社とのコラボで各ユニットおすすめのコースを回る、という企画が京都で行われていた。その企画は残念ながらもう終了してしまっているが、ファンの皆さんからとても好評を頂いたためお礼参りのようなものとして同じコースを巡ることにした。

     まず京都タワーに行き展望台からの街並みを堪能し、記念写真を何枚か撮る。一彩さんはSS予選会の時にすっかりハマってしまったのか、ここでも顔出しパネルでの写真を撮った。パネルを見つけた瞬間に「藍良!」と叫んで藍良さんに怒られてしまっていたのが可笑しくて巽さんと顔を合わせて笑い合った。

     次にお豆腐屋さんに向かう。ほとんどの商品は消費期限が当日中のもののため最終日にまた買いにくるための下見をする。私たちのコラボ期間中にはなかった夏季限定のきぬごしやからし豆腐も取り扱いがあるらしく、四人でうんうんと悩む。せっかくだから定番の嵯峨豆腐と夏季限定のきぬごしを買って湯豆腐でも楽しもう、ということになった。

     次のアラビカ京都さんへ向かう前に醤油だれの甘い香りに寄せられて竹路庵というお店に立ち寄った。どの和菓子も惹かれてしまい悩んでいるとこちらを微笑ましげに見つめる巽さんと目が合った。
     二人で悩んだ結局タレが黄金色に光るみたらし団子、ふわふわのどら焼き、草餅を二つずつ。苺一粒が丸々乗せられたいちご大福を人数分購入した。

    「四人で分けるにしても少し多かったでしょうか…?」
    「一彩さんと藍良さんはまだまだ食べ盛りの年頃でしょうし問題ないでしょう」
    「ふふ、そうですね。それに、折角のお休みですもんね」
    「えぇ、たくさん頑張った自分たちへのご褒美ということにしましょう……♪」
    「二人とも買えた〜?こっちもお店の場所の確認とアプリの注文できたよォ!これであとは受け取るだけ」
    「おお。なかなか便利なものですね」
    「システム自体はESの食堂とかと同じ…ってタッツン先輩は相変わらずスマホ不慣れなままだもんねェ…」
    「お恥ずかしながら…なかなか機械に慣れないもので。最初の頃よりはこれでも使えるようになったんですけどね」
    「僕もまだまだわからないことが沢山あるよ。特にSNSは難しいよ」
    「ほんっとにこの間超びっくりしたんだからァ!どう見てもスパムアカウントからのリプに返信したりプロフィール踏みそうになっててヒヤヒヤしたよォ……」
    「最近そういうの増えてますからねぇ…、気をつけてくださいね。巽さんも、気をつけてくださいね?」

     そんな会話をしつつ歩いているうちにアラビカ京都さんへ到着した。商品を受け取り四人でドリンクを飲み、和菓子をつまみながら歩く。竹林の小径を通りしばらく歩いて常寂光寺へと着いた。拝観料を払い中へと入る。観光ガイドなどにあった通り、仁王門をくぐり石段を登った先にある本堂や多宝塔からの眺めは美しかった。

     楽しかったコース巡回という名の嵐山観光を終え、宿へと戻る。セキュリティ面と雰囲気を楽しめるようにと和室付きのホテルが用意されていた。そして一体何の配慮かはわからないが私と巽さん、一彩さんと藍良さんの二人ずつで部屋が分かれていた。二人と一旦分かれ、部屋へと入る。客室は二部屋に分かれており和室がリビングスペース、もう一つが洋風の寝室となっていた。

    「とっても広くて豪華なお部屋ですねぇ…手配してもらっておきながらいうのも何ですがいいんでしょうか…」
    「英智さんは特に何も言ってなかったですし、彼の配慮に甘えて二日間こちらのお部屋を使わせていただきましょう」
    「そ、そうですね!もう既に決まってることですしこのお部屋でゆっくりさせて頂きましょうか」
    「はい♪では部屋の中も一通り見て荷物も置いたことですし、一彩さんたちと合流して夕食を食べに行きましょうか」
    「はい、それじゃあ行きましょうか」

     一彩さんと藍良さんと合流して晩ご飯を食べ、それから程なくしてホテルに戻ってきた。藍良さんは疲れたのか少しウトウトしていたためそのままお互いの客室へと帰る。和室の座椅子に二人で並んで腰掛ける。

    「旅行で気分が高揚しているからかいつもよりご飯を食べすぎてしまいましたぁ…」
    「そうですな。いつもは少食めなマヨイさんも藍良さんも今日はたくさん食べてましたね。いっぱい食べれる時に食べるのは良いことです」
    「とっても美味しかったですねぇ。藍良さんが思わず写真を撮り忘れてご飯が進んじゃうくらい」
    「一彩さんも目を輝かせて『こんなに美味しい地鶏料理は初めてだよ!』と言っていて微笑ましかったですな」
    「はい、お二人ともとっても愛らしかったですぅ…」
    「幸せそうにご飯を食べているマヨイさんもとても愛らしかったですよ」
    「あう…、えっと、わ、私先にお風呂頂きますねぇ!」
    「おや、逃げられてしまいましたな」

     巽さんに見つめられて恥ずかしくなってつい逃げてきてしまった。彼と出会ってから今までたくさん『美しい』や『愛らしい』と言われてきて慣れてきたかと思っていたが、やはりいつまで経ってもドキドキしてしまう。端正な顔立ちの彼が甘く蕩けてしまいそうな視線を私に向けるのは幸せだが、とても心臓に悪い。…変な気を起こさないうちにお風呂に入ってしまおう。そう思い服を脱ぎ出した所で

    「マヨイさん?」
    「ヒィ!?」
    「ああ、すみません。今から入る所だったんですな」
    「ノロマですみませぇん…」
    「いえいえ、そういうことではなくて全く音がしなかったので少し心配になってしまって」
    「ご心配をおかけしてすみません、すぐ入っちゃいますねぇ」
    「分かりました。では俺は本でも読んで待っています。ゆっくりお風呂に浸かって休んでくださいね?」
    「はいぃ…」

     お風呂に入って洗髪などを済ませ、湯船に浸かる。京都に着いてから少し駆け足気味での観光だったが楽しかったなあと一日を振り返る。明日は行きたい場所が別々にあったため二人ずつに分かれての行動となる。なんでも応援しているアイドルがたまたま京都のイベントに出演するらしく一彩さんと藍良さんはそれに行くらしい。残った私と巽さんは京都水族館に行くことに決めた。飼育されているペンギンたちの相関図がホームページに載っていて、興味を惹かれた私たちは即決したのだ。また水族館の目の前に広場もあるようで、そこでのんびりお話でもしても良いかもしれませんねと話し合っていた。

     少し長く浸かり過ぎただろうか。早くしないと巽さんがまた心配してしまうかもしれないと思い浴槽から上がる。備え付けのバスローブを着て一度巽さんに声をかける。

    「お待たせしてすみません…お風呂いただきましたぁ…」
    「おかえりなさい。いつもよりゆっくりできたみたいでよかったです」
    「今日のことを思い出してたら思ったより時間が経ってしまっていたみたいで、すみませぇん」
    「疲れが出て浴槽で寝てしまった、みたいなことではなくて安心しました。では、俺も済ませてきますね」
    「はい。あ、今日はたくさん歩いたのでよかったら浴槽に浸かってる時に足のマッサージしてくださいね」
    「もちろんです。だって明日はマヨイさんとデート、ですからね…♪ではお風呂いただきますね」
    「は、はいぃ……」

     巽さんの姿が見えなくなった後、へなへなとベッドに座り込む。はっきりとデートと言われてしまい、さっきまではなんともなかったはずなのに急に意識をしてしまう。巽さんとは今までも何回かデートもそれ以上のこともをしてきたはずなのに改まって言葉にすると少し照れてしまう。しかし今から何かできるようなこともある訳ではないな、と思い寝支度を済ませる。またドキドキして眠れなくなってはいけないから巽さんには申し訳ないが先に眠ることにしよう。ベットに入り目を閉じる。自分が思っていたよりも疲れがあったのかすぐに眠気がやってきて私はそのまま眠りについた。

    「ただいま戻りました。…マヨイさん?ふふ、お疲れだったんですね、おやすみなさい。良い夢を」


    アラームの音で目が覚める。アラームを止めたついでに隣のベッドの方を見ると誰もいない。巽さんは旅行先でも変わらず早起きされているようだった。早くに起きて、朝のお祈りをする。これが彼のルーティンなのだから意図せずとも決まった時間に目が覚めるのだろう。
     少し目が開いてきたのでまだ寝ぼけている身体を起こし、洗面所へ向かう。顔を洗い、歯を磨く。起きたてよりは幾分かマシになった私で彼に挨拶をしに行く。

    「巽さん、おはようございます」
    「おはようございます、マヨイさん。よく眠れましたか?」
    「はいぃ…巽さんより先に寝たくせに後で起きてくるぐらいにはぐっすり…」
    「惰眠を貪ることはよくありませんが、必要な睡眠をしっかりとることはいいことですよ。いつもマヨイさんは夜更かししがちですから眠れたなら良かったですな」
    「あう…ありがとうございます?」
    「ではそろそろ朝食の時間になりますし一彩さんと藍良さんの様子を見に行ってきますね」
    「藍良さんの愛らしい寝顔を……、ではなく様子を見に私も行きたいです!」
    「マヨイさんは自分の着替えを済ませてから来てくださいね。カードキーと朝食会の紙は俺が持っていきますので、貴重品だけ忘れないようにして下さい」

     そういって巽さんは隣の部屋へと向かった。藍良さんの寝顔を見るため手早く用意を済ませ、私も隣の部屋へ向かう。一彩さんに迎えられ部屋の中へ入ると既にバッチリ準備を済ませた藍良さんがいた。

    「あ、マヨさんおはよう〜。おれ、今日のイベント楽しみすぎて早く目が覚めちゃった♪おかげで参戦準備もコンディションもバッチリだよォ!」
    「藍良はいつもお寝坊さんだから起こした方がいいのかなと思っておたんだけど、要らない心配だったみたいで良かったよ!」
    「藍良さん、今日は早起きできて偉いですね。今後も続けれるように努力しましょうね」
    「うぅ…善処します…」
    「ふふ、少しずつ慣らしていきましょうね」
    「では朝食をとって戻ったら各々の目的地へ向かいましょうか」

     そうして私たちは朝食を摂り部屋に戻って準備を済ませた後、それぞれの目的地へ向かうためホテルを出たところで別れた。

    「ではマヨイさん、水族館へ向かいましょうか」

     巽さんはそう言った後私の手を取って歩き出した。

    「た、巽さん、手…!」
    「ふふっ。折角のデートですし、旅行先で迷子になってはいけませんからな」
    「あうぅ…でも……」
    「ダメ、ですか?」
    「……ダメじゃないですぅ…」

     巽さんの少ししょんぼりした顔でおねだりをされてしまうとつい許してしまう。巽さんはそれをわかった上でやってきているような節があるし、それを毎回受け入れてしまう私は弱い。
     そして手を繋いだまま目的の水族館へと到着した。館内へと入り、当日券を二枚買う。まだ五月とはいえ少し暑かった外から館内に入ると水槽があるためか涼しく感じ、息を吐く。

    「マヨイさん、大丈夫ですか?」
    「あ、えぇ、大丈夫です。中に入ると涼しくて思わず息が」
    「それなら良かった。もし気分が悪くなったりしたらすぐに俺に教えて下さいね」
    「はい。それじゃあ、早速館内を回りましょうか」
    「はい♪」

     指を絡め、さっきまでより少しだけ強く手を握られ歩き出す。
     最初の水槽は“京の川”というらしい。なんでも由良川の上流から下流までを一つの水槽で表現しているらしい。ヤマメやオイカワ、コイなどがそれぞれ別々の段に別れて泳いでいる。離れたところにある水槽にはオオサンショウウオが展示されている。

    「大きいですねぇ…。というかじーっとしてますね、この子達」
    「ふむ、説明によると夜行性のようですな。昼間は基本的にはジッとしているようです」
    「そうなんですね。なんだかぬいぐるみみたいで可愛いですね」
    「そうですな。ここの手が特に愛らしいです」
    「赤ちゃんみたいにむにむにしてそうで可愛らしいです」
    「ええ、最後に売店でぬいぐるみでも買いましょうか」
    「いいですね」
    「では次のコーナーに行きましょうか」

     そうして次の展示へ向かうと少し開けたところへと出る。コの字に凹みがある水槽にオットセイ、普通の水槽と円柱の水槽がセットになっているところにアザラシが展示されている。どちらの水槽も上から眺めることもできるようで、ひとつの水槽を二度楽しめる設計になっている。どちらの水槽でもスイスイと気持ちよさそうに泳いでいる。
     オットセイの水槽を上から見ると岩の上で休んだりひなたぼっこをしている子もいてとても愛らしい。
     泳いでいるアザラシの姿が見えなくなった、と思ったら円柱型の水槽の方でぷかぷか浮かんでいる。そしてシャッターチャンスは終わったぞとでもいうかのように大きい水槽に戻っていく。入れ替わり立ち替わり、数頭のアザラシが水槽を行き来して泳ぎ回る。それを見ているだけで楽しく、何時間でも見れてしまいそうだ。
     次の展示へ向かおうかというところで、売店に目が行く。水族館に展示されている生き物や、魚の形をしたドリンクやフード類が売られている。お昼ご飯にはまだ早いが、その可愛らしさに釘付けになり思わず立ち止まってしまう。

    「マヨイさん?売店のメニューが気になりますか?」
    「はい…ちょっとお昼には早いと思うんですけどメニューがあまりに可愛くて…」
    「では小休憩がてら何か買って食べましょうか」
    「はい…!私レジ横のカゴにある亀さんのパンが気になっててぇ…」
    「おぉ、いいですな。では俺はペンギンのおにぎりにしましょう…♪」
    「あとドリンクがこっちとこっちで迷ってて」
    「ではドリンクは一つずつ買って半分こしましょうか」

     内容が決まり注文をして商品を受け取る。近くにあるベンチに腰掛けそれぞれの商品を置く。邪魔になるのも申し訳ないと思い、商品だけで写真を撮りスマホをしまう。

    「では藍良さんに見せてあげる写真も撮れたことですし、いただきましょうか」
    「はい。いただきます」
    「いただきます」

     まず海苔が湿気てしまう前に二人でペンギンのおにぎりを一つずつ分ける。あまりの可愛いさに食べるのを躊躇しそうになったが、ひと口食べて以降は普通のおにぎりと大差なくなったため問題なく食べれた。
     問題は今から食べる亀さんのパンだ。先ほどのおにぎりもとても愛らしかったのだが、このパンはパンひとつひとつの顔がチョコペンで描かれていた。それによって少し表情が違ったりしておにぎりとは別の可愛らしさがあった。何匹かいる中から選んだからか、より愛着のようなものがちょっと湧いてしまい食べづらさを加速させる。どうしようかと思い巽さんの方を向く。

    「巽さぁん…、あ……」
    「?」

     巽さんの方を見ると、既に亀さんは姿を変えていた。顔がなくなっていた。あぁ、巽さんって意外と思い切りがいいところありますもんね…。

    「マヨイさん、どうかされましたか?」
    「あ、いえ…。巽さんってこういう時、頭から食べるんですね」
    「ふむ…そういえばたい焼きなども頭から食べますね。なんというか、ずっと目が合っていると食べ辛くなってしまう気がして」
    「そうなんですね。私は逆に顔は可愛いので先に食べちゃうのが勿体無い気がしてしっぽ側から食べちゃいます」
    「なるほど、それでさっきは少しショックを受けたような顔をしていたんですね」
    「え、私そんな顔になってましたか…?はうぅ…」
    「いつもよりほんの少し違っただけですよ、大丈夫です」
    「一体何を持って大丈夫なのか全然分からないですが…良かったです…?」
    「俺はこのままこの子を食べ切りますがマヨイさんはどうされますか?袋をもらってきてあとで食べるようにしましょうか?」
    「いえ、食べます…。あとで食べようってすると永久に食べられなくなっちゃいそうなので……」
    「わかりました。ではその子を食べ終わったらまた水槽を見てまわりましょうか」
    「えぇ、そうしましょう」

     そうして食べ終わったゴミを処分してからまた水槽を見て回る。
     一つは“ペンギンの洞窟”、もう一つは“京の海”というらしい。ペンギンの洞窟は上の階にいるペンギンが泳いでいる様子が見られるものらしい。地上でよちよち歩く姿と水中でスイスイと泳ぐギャップには目を見張るものがある。京の海の水槽にはエイ、サメ、イワシなどの水族館の定番の魚たちが悠々と泳いでいる。水族館でよく見る光景であってもその景色に癒され、魅了される。

    「いつ見てもエイのお腹は可愛いですねぇ。お顔じゃなくて鼻の穴だって初めて知った時はびっくりしました」
    「俺も小さい頃はずっと顔だと思っていました。やっぱり初めはここが顔だと思ってしまいますよね」
    「えぇ、水槽のガラス付近を泳いでるところをよく見かけるから勘違いしちゃいますよね」

     一階の水槽を満喫し切ってから二階へと向かう。二階にはペンギンとクラゲの水槽、イルカショーのスタジアムがあるようだ。通路を通り、二階へとやってくるとすぐ右手側にペンギンたちがいた。たくさんのペンギン達がじゃれあったり、ひなたぼっこをしに集まったりしてとても愛らしい。しかし、思っていたより少ないなと考えていると巽さんに肩を叩かれた。

    「マヨイさんマヨイさん。あちらの通路にペンギンが歩いています」
    「この細い空中通路にですか…?あっ…!」
    「飼育員さんの後ろをついて歩いていて可愛らしいですな。空のおさんぽというのも楽しそうです」
    「えぇ、とっても愛らしいです…!これは動画を撮ってお二人にも是非教えてあげましょう♪」

     スカイウォークと呼ばれるおさんぽ道を歩くペンギンを堪能し、奥へと進むと一階にあった京の海の水槽の上部があった。そこからさらに通路を進むと、クラゲワンダーというクラゲの水槽がたくさんの展示についた。大きさも色も違う様々な見た目のクラゲがいくつもの水槽に分かれぷかぷか浮かんでいる。展示の中には360度をミズクラゲに囲まれた水槽があり、まるで水中で一緒に揺蕩っているような気分になれた。

     最後にイルカスタジアムの近くに行くともうすぐショーが始まるようだったが、人が多く断念することにした。もしまた訪れることがあればその時に観ましょうね、と巽さんと指切りをした。次に来る時は一彩さんや藍良さんと一緒に四人で、ついでにピクニックでもしましょうか、なんて計画を立てる。
     通路にあった小さな水槽のクマノミやチンアナゴを見て、オオサンショウウオのぬいぐるみと背比べをする。どうやらここで水槽の展示は全て終わりらしく、お互いにもう一度見たい展示がないか確認し合う。そしてもう一度見たい水槽も周り終わって一階のショップへと降りる。
     ショップの中を見て回ると、やはり水族館のイチオシであるオオサンショウウオとチンアナゴのグッズが多く扱われている。巽さんと相談しつつ、土産用のお菓子を少しと四人でお揃いのストラップを購入した。私は自分用のお土産で少し小さめのオオサンショウウオのぬいぐるみを連れて帰ることにした。

     建物の外へ出るともう夕方ごろになっていた。時間も時間だし広場でのんびりお話しする予定を変更して、ホテルに戻りそこでお話しすることにした。

    「水族館、とっても楽しかったですねぇ」
    「はい、ひとつひとつの展示が凝っていて満足感がありましたね」
    「えぇ。巽さんはどの水槽がお好きでしたか?」
    「そうですね…、俺はやはり京の海の水槽でしょうか。大きさ水槽の中を悠々自適に泳ぐ魚たちを見ているのはいいものですな。マヨイさんは?」
    「うーーん……、どれも甲乙付け難いのですがクラゲワンダーのパノラマ水槽のところでしょうか。どこを見てもミズクラゲがふわふわと楽しそうに浮かんでいて、まるで自分もクラゲたちの仲間になったみたいで楽しかったです」
    「確かにあの光景はなかなかのものでしたな。藍良さんが見たら、“ラブ〜い♡”と言いそうなくらい」
    「うふふ、そうですね」

     二人を連れて行ったらどんな反応をしてくれるかと考えるだけで、まだ何も決まっていないのに次また訪れる時が楽しみでたまらなくなる。こんな幸せな日々がずっと続きますように、と思ってしまう。

    「マヨイさん」
    「…?どうかされましたか?」
    「大丈夫ですよ、俺たちはマヨイさんが望む限り、いえ何があってもずっと一緒です」
    「…はい」
    「俺たちリストラ寸前から這い上がって来た仲間です。家族です。これからもみんなで肩を寄せ合って、共に支え合いながら前へと進んでいきましょう。俺たち自身の歩幅で」
    「えぇ、そうですね。私たちは私たちらしく歩んでいきましょう」
    「はい♪では一彩さんたちを下まで迎えにいきましょうか」

     一彩さん達を迎えに行ったあと、夕食やお風呂を済ませベッドへ入り眠りに就く準備をする。明日の朝に慌てないように荷物を詰めていると巽さんが近づいてくる。

    「巽さんどうかしました?」
    「今日のデートはどうでしたか?楽しかったでしょうか…」
    「はい、とっても」
    「それは良かったです。これで安心して眠れます」

     そう言った巽さんの顔が近づいてきて、頬に1つキスをしたあと自分ベッドへと向かった。そのままおやすみなさい、とふわりと微笑んだあと彼は眠りについた。残された私は熱くなった顔をパタパタと扇ぎ、荷物を避けてベットへ潜り込んだ。


     アラームの音で目が覚める。今日は最終日。お豆腐を買いに行って、お土産を買ってお昼頃には帰りの新幹線に乗る予定になっている。
     あまり時間の余裕が無いため、巽さんと朝の挨拶をして互いにチェックアウトの準備をする。忘れ物がないか入念に確認をして問題がないことを確認して部屋をでる。
     昨日以外は少し慌ただしいスケジュールでの旅行だったがとても楽しい思い出になった。休みが明けてアイドルとしての仕事に追われることになったとしても、この三日間の思い出は褪せることはないだろう。
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