ベイビィ・オン・ザ・ソファ ソファに五歳児がひっくり返っている。比喩だ。もちろん。オレの知り合いに五歳児なんかいない。
だがしかし、五歳児みたいな男はいる。何人も。オレも含めみんな五歳児。したいことをして、したくないことは断固としてしない。楽しいことだけしていたい子供みたいな大人ども、あるいは大人みたいな子供たち。
その中で唯一五歳児じゃなかった男、大体十二歳児くらいの敬一くんが、今は五歳児になってソファに転がって、オレの公式グッズのもちもちレイメイくんクッションをでかい両手で捻り潰している。やめろよ。かわいそうだろ。
「敬一くんなんか飲む?」
「泡」
遠慮のかけらもない。敬一くんが泡といえばそれはシャンパンだ。フレッシュできっちり酸味のあるシャルドネ系がお好みで、クリュッグの長期熟成のやつとかはそんなに好きじゃない。飲み飽きた由。二十六歳にして贅沢な舌だ。
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