前々世①前々世
仕事の合間に立ち寄った本屋でヘウォンメクは週刊誌コーナーで経済誌を立ち読みしている学校帰りと思われる小学生を奇妙な目で見ていた。
まだ低学年と思われるリックを背負った半ズボン姿の児童の手にコミック誌ではなくオッサンが読むような経済誌がなんともミスマッチである。
『随分とませたガキだな』と、ヘウォンメクは横目で観察しつつ目当ての書籍を持ってレジに向かうため少年の脇を通り過ぎようとした。ふと件の少年がこちらに顔を上げバッチリ目が合った。毛先がふわふわした黒髪にくっきり二重から覗く一見ぼんやりしてそうな大きな瞳。
「あ——…まさかテジャン?」
「…あぁ、ヘウォンメクか。大きくなったな」
ヘウォンメクの腰にも届かない背丈の少年が久しぶりに会った子供に親戚もしくは祖父みたいな台詞を懐かしそうな顔をしてヘウォンメクを見上げている。そこには子供特有の幼さなどない。まるで老齢をしたような達観した顔付きをしていた。
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