二人の世界へ☆カリスマパロ
※デス・バスターズの敵ポジションがドツクゾーンのポイズニーさんに当てはめてるよ。口調は分かってないよ!
※原作でのピュアな心は、“命の煌めき”に置き換えているよ!
※それ以外の設定は過去のポイピクから探してね!
「ブルーム……!」
囚われたイーグレットが意識を取り戻して最初に目をした光景は、ポイズニーによってあの銃を突きつけられているブルームの姿だった。
このままでは彼女がやられてしまう。彼女を助けなければの一心で、イーグレットは自身を縛る荊を引きちぎり、今にも命の煌めきを奪われそうなブルームの元へと走り出した。
「ブルーム!!!」
イーグレットの動きを感知して、壁に仕組まれたトラップ────神の罰が作動し、銃口が彼女の方に向いた。
「イーグレット……!?」
不穏な動作音に気づいたブルームが彼女を止めようとする前に、向かってこようとする煌めく銀の翼の少女に神の罰による矢の雨が降り注いだ。
一度は倒れ伏したイーグレットだが、それでも相方を、大切な彼女を守りたいと言う気持ちだけでふらふらになりながらも立ち上がる。
「咲は……死なせない……っ!」
「だめ、待って、イーグレット!動いちゃダメ!!」
ブルームの忠告も無視してまでも、イーグレットは諦めずに歩を止めない。その小さな動きにすらもトラップ────神の罰は反応し、その翼を切り裂くかのように矢の雨を浴びせ続ける。
「舞っ!!!」
激痛による悲痛な叫びすらもかき消してしまうような雨がようやく止んで、座り込んだ少女にブルームが悲鳴をあげる。しかしそれでも、イーグレットはゆっくりと立ち上がる。神の罰からは硝煙が上がるだけで、特に動きはない。
「……弾切れ?……っ!?」
「……っ」
神の罰の動作不良を確認しようとしたポイズニーは、距離を詰めていたイーグレットに取り押さえそうになった。
「は、離れなさいっ!この……っ!!」
しかし、罰を受けすぎた今の彼女ではあまりにも力不足。ポイズニーが構える銃口が胸元のハートに押し込まれ、勢いの余りにそのトリガーが弾かれてしまった。
ドォン────ッ!!!!
「……!!!」
眩い光と共に放たれた光はイーグレットを貫き、彼女が持つ命の煌めきは抜かれてしまった。
命の煌めきが抜かれる。その意味を、ブルームは正しく理解している。まるで走馬灯のように、彼女の笑顔が脳裏によぎる。
白銀の光を放つ煌めきは明らかに他の人間たちが持つそれとは一際違う煌めきで、すぐに形を変えて手鏡のようなアイテム────自分たちが今までずっと探し求めていた“タリスマン”の一つが姿を現した。
息を切らしているポイズニーの足元では、イーグレットが倒れている。彼女はもう、命の煌めきを戻さない限り、その目を覚ますことはない。
「これがタリスマンね……、今度はアンタのをいただくわよ……!」
「わ、私たちが、タリスマンを封印されし者……?これが……これが、私たちが受ける報っていうの……?!」
もう、何が起きているのか何もわからない。理解したくない。
ただわかることは、タリスマンがずっと近くにあったと言う事実と、もう二度とキュアイーグレット────舞と言葉を交わすことができないと言う重い絶望感だけだ。助けられなくて悔しいとか、ポイズニーが憎いとか、そう言うのではない。
「待ちなさいっ!!」
ああ、今度は自分が……。自身の死を覚悟したその時だった。見上げた先の蝶々のステンドグラスから差し込んで虹色に輝く月の光に照らされて、一人の少女の声が響いた。
ブルームには一瞬だけ、その少女が薔薇の香りと希望の光を纏った『希望の乙女』の姿に見えていた。
現れたのは、夢原のぞみだ。ブルームたちが外で待機させていたフラッピたちも一緒だ。
「お前は……!」
「ええ〜いっ!!!」
「ラピ〜ッ!」「チョピ〜ッ!」
ポイズニーが驚くまもなく、のぞみは全力でポイズニーに向かって走り出し、慣れないタックルをかました。いくらポイズニーでも不意打ちとフラッピとチョッピの追撃は想定していなかったようで、あの銃を落として建設中の教会の下階の方へと落下していった。まあ、一応どこかで脱出していそうだが、ひとまずの危機は去ったのだった。
■□■
「舞〜……!」
「しっかりして舞ちゃん!」
命の煌めきを抜かれて眠るイーグレットは、のぞみやチョッピの呼びかけに答えない。彼女の近くでは、鏡の形をした不思議なアイテム────タリスマンが持ち主を待って浮かんでいる。
「お、お願いだよタリスマン!舞ちゃんの中に戻っ────「ダメだよ……」……!」
タリスマンの存在に気づいたのぞみがそれを元あった場所へと戻そうとするが、ブルームがそれを止める。彼女は座り込んで俯いたままである。
「タリスマンは見つかったんだよ。……それで、それでいいんだ……」
「さ、咲……!」
「そんな……!じゃあ、舞ちゃんは……」
命の煌めきが抜かれたままでは、人間は動くことができず眠り続けることになる。二人の目的を加味するなら、ブルームの反応は正しい。しかし、その表情は現実を受け入れられず自身に無理やり言い聞かせているようにも聞こえる。
「……ずるいよ、舞。自分だけの世界に行っちゃってさ……」
寂しそうに呟いた彼女は、のぞみから奪ったピンキーキャッチュを投げ飛ばして手渡す。
「それは返すよ。……それがないと変身できないのに無茶しちゃってさ……やっぱりのぞみちゃんはすごいね」
「咲!」
「だ、ダメェっ!!」
ブルームがそのまま流れるように、煌めきを抜き取る銃を手にとって銃口を自身の胸に当てようとしていたため、フラッピとチョッピとのぞみが揉み合いになりながらも彼女を引き止めようとする。
「何バカなこと考えてるラピ!」
「咲までいなくなるのは嫌チョピ!」
「みんな離して!私の中にもタリスマンがあるんだよ!?」
「タリスマンがなくたって世界は救える!」
「!!」
のぞみからの思わぬ言葉に、ブルームが手を止めた。まるで前世の夢で見たクイーンやプリンセスのような、万人を救う慈愛と覚悟を滲ませた薔薇色の瞳が、自身の姿を映している。
「あたしが……救ってみせるから……!」
「……!」
それこそ、自分たちが求めていた『希望の乙女』────メシアの姿と、のぞみが重なって見えた。彼女はただ、誰も犠牲にならないようにという、どこか甘い考えで動いているというのに。
そんな彼女を見て何を思ったのだろう。完全に取り乱していた中でわずかに冷静さを取り戻したブルームが笑いかける。
「……のぞみちゃんがそう言うと、なんだか本当にできちゃいそうな気がするよ」
「……!」
「今ね、何故かのぞみちゃんが、希望の乙女に見えたんだ。……私、のぞみちゃんのことをどこかで信じきれてなかったのに……」
「咲ちゃん……!」
それだけ言って、銃を持った手を下ろす。
これで一安心だとのぞみが息を吐いた瞬間、フラッピとチョッピを託すかのように押し除けられてしまう。
「うわぁっ!?」
「ラピッ!?」「チョピッ!?」
「キュアドリーム。フラッピ達と一緒に、あと一つのタリスマンを見つけてね」
「あ……っ、やめてっっ!!!」
初めて出会った時のように、ブルームは花が開いたような笑顔を見せた。その笑顔は、後には引けないと言う覚悟が浮かんでいる。
ドォン────ッ!!!!
身廊内にのぞみの悲鳴と、閃光と共に大きな銃声が響き渡った。
「のぞみっ!!」
「のぞみさんっ!!」
ルージュ達がたどり着いた時には、全てが終わっていた。
倒れたまま動かないブルームとイーグレット。彼女達のそばに浮かぶ鏡と、黄金色の光を放つ煌めく命から変化した一本の剣。座り込んで、フラッピとチョッピを抱えて俯いたまま動かないのぞみと、一部始終を見てしまい、のぞみの代わりに泣き出してしまった妖精達。
「そんな……二人とも、どうして……」
「のぞみさん……」
「この状況は、一体……」
「そんな……、咲ちゃん、舞ちゃん……どうして……!」
────そんなに託されたって、二人がいなきゃ意味ないよ……!
おしまい