徹郎さんが亡くなった。
涙は出なかった。寂しくない訳では無いのに。
”約束”を果たせた少しの安堵や、各所への連絡とか…とにかくやることが多かったから自分の感情よりもやるべき事を優先した…んだと思う。
診療所や村の皆、一也や宮坂からも心配された。
「譲介、大丈夫か?」そんな気遣いの言葉に
僕は大丈夫。気を使わせて悪いな、と返した。
炎に焼かれ、骨壷に収められた彼をそっと抱く。
生前は僕よりも大きくて、同じくらい重たかった彼が今では僕の両手に収まるくらい小さく、軽くなってしまった。
あなたが亡くなってから、49日。
冬の寒さが薄れ、ほのかに暖かくなり始めた頃。
相棒と呼ばれていた猫の写真の横に飾られた、
微笑むあなたと僕の思い出の写真を撫でる。
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