3月 新昴の日 SS2024年3月23日 新昴の日 SS
=================
Kiss me sweet again
午後公演が終わって小一時間。誰もいない楽屋の片隅で顎を掬われ、唇同士が重なる。ふんわりとした温かな感触。このまま時が止まってほしいと、願ってしまう。
どちらともなく熱い吐息を漏らして、けれどすぐに離れていく彼の温度。
「…えへへ」
ふにゃりと笑う新次郎の顔には、まだ初心さと幼さが残っている。彼自身、これ以上先に進むつもりは無いのだろう。だがこの熱が冷めてしまうのは惜しい。
そう思うのと同時に、僕は彼の瞳を見上げていた。
ああ…23cmもの身長差ゆえに、恐らく僕が上目遣いをする形になっている。日頃なら恥ずかしくて仕方がないが、今はそんなことを考える余裕さえない。
1132