ぎゅう、と眉間に皺が寄るのがわかった。
とっても楽しみにしていた、司くんの手作りのお弁当。つやつやの卵焼き、半分に切られたハンバーグ、タコの形のウィンナー、小さなグラタン。
そして弁当箱の隅に鎮座する、黒っぽいもの。
「…………司くん。これ」
「ん? ああ、茄子炒りだ!」
にこ、と笑う司くんは、自慢げな顔でつらつらと語る。
「茄子は青臭さも少ないし、醤油で更に味も隠れる! クタクタに炒めたから独特の食感もなくなって……」
「はぁ」
「……類?」
つんつん、と箸で弁当箱の隅の宿敵をつつく。行儀が悪いぞ、なんて声はスルーした。
「何度も言っているじゃないか、僕は野菜が嫌いだって」
「だ、だが、栄養バランスがだな」
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