打ち合わせの日 ある夕方のこと。
「なあ、せらお。ラーメン行かん?」
「ラーメンっていうか」
「二郎ね」
たまたま帰りが一緒になった雲雀からの食事のお誘いは、いつも決まってラーメンだ。俺が快諾すると雲雀はそうこなくちゃ、と八重歯を見せて笑った。行き先はもちろん、彼が大好きなあの店。あの店でしか食べられないあの味が俺も好きだし、時折むしょうに食べたくなることがある。それは、雲雀ほどの頻度ではないけれど。
「俺もう腹減りすぎてやばい。マジで。腹と背中がくっつきそう」
そう冗談を言って、雲雀は両の手で自分の腹をさすった。数回往復した手のひらが、今度はさすったばかりのところをぽんぽんと叩く。まるで太鼓だ。「お腹と背中が、くっつくぞ」なんて歌いながら、雲雀は俺の隣を歩いた。
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