想うはあなた一人 秋の昼。残暑はまだ少し残っているものの、気候がほんの少し穏やかに感じられるようになったある日。ダイキは珍しくハザマではなく、人間界のとある霊園に来ていた。
「よいしょ……ふぃ~、だいぶ綺麗になったかな」
「ダイキ、こっちも掃き終わったぞ」
「ありがとう龍之介。それじゃお線香あげとこっか」
墓石を丁寧に磨き、周りの落ち葉や雑草を払いのけた二人は火を灯した線香を前に目を瞑り手を合わせる。
(…ただいま。お祖父ちゃん、お祖母ちゃん)
そう、彼岸の時期。二人はダイキの祖父母へ墓参りをするため、人間界に訪れていたのだ。
「だいぶ汗かいちゃったね」
「もう9月って言ってもこっちはまだまだ暑いみたいだからな。半袖でも良かったんだぞ?」
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