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    BD-rgnd創作

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    BD-rgnd創作

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    いい兄さんの日にちなんで、ダイキのセコム、五色龍兄ちゃんたちのお話

    いつもありがとう、お兄ちゃん「我が子孫、ダイキの守護に努めよ」

    俺たち5人に告げられた最初の使命はそれだった。


     俺は龍王直々にダイキの守護を命じられた五色龍の1人、フレイム。と言っても、この名前は本来の名前ではない。

     そもそも、俺たち五色龍には各色の龍との名があるだけで本来の名前と呼べるようなものはない。因みに俺は赤色の龍だから赤龍だ、安直で分かりやすいだろ?

     そんな俺たち一人一人に名前を授けてくれたのがさっきも言った守護の対象であり、今では俺たちにとって最も愛おしい弟であるダイキだ。
     ダイキ自体は「センスのないネーミングでごめんね」などと謝っていたが、どんな名前でもお前につけてもらえる名前なら、これ以上素晴らしいものは無いだろう。


     ん?なぜダイキを「弟」と言ってるかだって?それには深~い訳があるんだよ。

     最初に話した通り、俺たち五色龍はダイキのご先祖である龍王から、ダイキの一生の間、傍で守護の役目を果たすよう承った。ダイキが生まれた瞬間からダイキの中に存在していたこともあって、ダイキの成長過程は全て見守っているぞ。
     だが、ダイキの住む世界は龍王が居た時代よりも妖怪や幽霊といった類が少なく、ダイキ自身が持つ霊力の解放も必要ない、と龍王が判断された。その結果、俺たちはダイキの中で眠りながら見守ることになった。もしもの時にダイキを守れるよう、力を蓄える意味を込めてな。

     加えて、俺たち以外に龍王直々の守護も掛けられていて、悪霊に目を付けられないよう存在を薄められていたんだ。
     …そのせいでダイキが苦しい思いをしていたのは、見守る側としても辛かったがな。
    あいつが辛い思いをしていた時も、すぐにでも覚醒して、俺たちがいるから大丈夫だぞ!って言って抱きしめてやりたかった。
    だが、制約に縛られた俺たちには自力で覚醒するのはほぼ不可能だった。一番近くにいながら触れられない。あの時ほど自力で覚醒出来ないことをもどかしく感じたことはない。

     その頃からかな。俺たちがダイキを「弟」として意識するようになったのは。自分の存在を忘れ去られても必死にもがいて生きて、他者に溢れんばかりの慈悲を与える、そんなダイキをいつのまにか愛おしく思うようになったんだ。


     そしてある日、ダイキは今の幻妖界に召喚され救い主となった。
    だが、その後すぐに命を奪われしまった。俺たちは絶望したよ。何も出来ないまま目の前で死んでしまった弟をただ茫然と眺めるしか出来なかったんだからな。

     あの時は5人とも現実を受け止めきれなかったな。我ながら情けなかった。
    自分が身代わりになれば…、無理やりにでも覚醒できていたら…、あの時はそういった後悔の念をつらつらと述べるしか出来なかった。
     だから、霊具イザヨイやイヅナ・ぬりかべという二人の妖怪には感謝をしている。ダイキを、大切な弟を甦らせてくれてありがとう、とな。


     そういえば、ダイキが甦った後にいつの間にか俺たちも覚醒してることに気づいたな。『ダイキが死の危険に晒されたときに霊力を解放する』、その制約が俺たちが覚醒するためのトリガーだったんだが、ダイキが死ぬ間際に解かれたんだろう。


     最初は喜びのあまりダイキの中から飛び出しそうになったが、黄龍、今はセイントって名前だが、あいつに止められたよ。「ダイキを混乱させるからまだ大人しくしとけ」ってな。

    だから覚醒後も暫くは表に出ず、何かあった時にこっそり力を貸すぐらいで立ち回っていたよ。ダイキも自分の霊力に結構戸惑っていたしな。空飛べるようになってるし。


     しばらく経って俺たちが姿を現した時も困惑していたが、思っていたよりもすんなり受け入れていたな。
    ダイキ曰く、「ずっと誰かが傍にいてくれていたような、不思議な温かさがあったんだ」と感じていたらしい。そう言われたときは無性に嬉しかったな。

     あと、その時にダイキは俺たちを兄と呼んでいいかといわれたが、正直心臓が飛び出そうだったよ。あの愛おしいダイキにお兄ちゃんと呼んでもらえるんだぞ?そんな至福を味わえるのか?そう思った瞬間、口が勝手にすぐ承知してたよ。

     それと同時にダイキは俺たちに名前をくれたんだ。一人一人の話を聞いて、イメージと合わせて名前を一生懸命考えてくれていたよ。
    その時から俺たちは、自分の新しい名前を大切にしているんだ。唯一無二の宝物だ、ってな。

     それからは今まで通りダイキの守護をしつつ、公認のお兄ちゃんとして傍にいる。
    ダイキが辛いときや苦しいとき、俺たちがいるから大丈夫だぞと声をかけて、今度こそ抱きしめてやるんだ。もう、あいつに寂しい思いなんかさせない。

     例え、この世界の住民がダイキを忘れてしまっても、俺たち5人だけはずっと傍にいると誓おう。なんせ俺たちは、ダイキのお兄ちゃんだからな!




    「…ん、…兄ちゃん、…フレイム兄ちゃん!」
    「…んあ?」
    「やっと起きた。おはよう」
    「あ、ダイキ…おはよう」
    さっきのは夢…か。ぼりぼりと頭を搔きながら、覚醒したての脳中で記憶をたどる。

     えーっと、確か今日はダイキに聞きたいことがあると言われてたんだっけな。んで実体化はしたものの、ダイキが仕事の件で少し出かけるから先に家事を頼まれたんだったな。
     とはいえ、皿洗いと洗濯物を畳むだけだったからさっさと終わらせて、ダイキが帰ってくるまで暇だったからエネルギーの消費を抑える意味も込めて、縁側で一眠りしたんだった。 

     徐々に記憶が鮮明になり、干していた洗濯物を取り込むダイキへと振り向く。

    「ダイキ、仕事はもう終わったのか?」
    「うん。民家からお祓いと厄除けのお札の奉納の依頼をされただけだから1時間も経たずに終わっちゃった」
    相変わらず仕事が早い。流石、俺たちの自慢の弟だ。

    「そうか、お疲れさん」
    「ありがとう。寧ろ家事を任せっきりにしてごめんね。力の消費も激しかったでしょ?」
    「いんや。戦ったり俺自身が遠出するわけでもなかったからな。それに寝てたし」
    「そっか、それなら良かった」
    他者への心配と感謝を欠かせない。そこも愛おしい。

    「それで、聞きたいことって何だ?」
    「そうそう。それなんだけど…」
    よいしょ、と洗濯かごを抱えながら俺の隣に腰かける。
    「フレイム兄ちゃんって何が好き?」
    「お前」
    「そういうことじゃなくて、何の食べ物が好き?ってこと」
    「あぁ…」
    つい条件反射で答えてしまった。ダイキに諭され、自分の好物を考えてみる。

    「んー…お前の作るものなら何でも好きだがなぁ」
    「もぅ、真面目に考えて!」
    「ちゃんと真面目に考えてるぞ?」
    「はぁ、フレイム兄ちゃんもそういう答えか…」
    …ん?フレイム兄ちゃん“も”?どういうことだ?


    「実は、他のお兄ちゃんたちもおんなじ答え方してるんだよ。示し合わせてるわけじゃないよね?」
    「いや、そんなことは無いが…あいつらも同じなのか」
    つくづく似た者同士だな、俺らは。

    「でも、どうして急にそんなこと聞きだしたんだ?」

    率直に感じたことを聞いてみる。するとダイキはあー、と少し言いづらそうに口を開いた。

    「実は今日、いい兄さんの日なんだって。だからそれにあやかって、お兄ちゃんに何か恩返ししたいなって考えたんだ。結局、好物を作ってあげるってことに行き着いたんだけどね。
    ただ、お兄ちゃん達ってあんまり食事を必要としないから普段何を食べるのか分かんないでしょ?そこで一人一人に今までの食事で何か気に入った食材とかないかなーと思って質問してたんだけど…結果はご覧のとおりだよ」

    うーん、と口に手を当てながら悩むダイキをよそにフレイムは天を仰ぎ静かに悶えていた。

    可愛いッ!!!可愛いが過ぎる!!
    いい兄さんの日に日頃の感謝を伝えようと好物を聞き出していたのか!?天使かこの子は!!そんなもんお前の作った料理全部って答えるわ!!他の奴らも分かってるな!!いや待て、マジで健気過ぎんか?


    心の中で限界オタクのように叫ぶ赤龍を横目に、ダイキは暫く考え込んだ後、兄の方に向き直る。

    「お兄ちゃん」
    「ハァァ…ん、なんだ?」
    「ホントに僕の料理なら何でも良いんだね?」

    こちらを見つめるダイキの瞳にはいつにもなく真剣な表情が見て取れる。

    「あ、あぁ勿論だ。お前が作ってくれるものなら何でも好きだぞ」

    問いに答えると、ダイキは深いため息を一つ吐き出し、立ち上がる。

    「分かった。じゃ、買い出し行きますか」
    「お、何を作るか決まったのか?」
    「うん。せっかくだし、僕の好きなもの作ろっかな~て」
    「ほぅ、そりゃまた何で?」
    「だって僕の好きなものをお兄ちゃんたちが美味しいって言ってくれたら嬉しいじゃん」

    至極当然のように答えるダイキの表情にまたもや天を仰ぐ。龍王様、感謝いたします。

    「それじゃ行ってくるね」
    「あ、俺も一緒に行くぞ」

    フレイムも急いで立ち上がり、出掛けようとするダイキを追いかける。

    「え、お兄ちゃんたちのための買い出しなのに…」
    「だから一緒に行くんだ。お前が何を作るか気になるしな」
    「…分かった。荷物持ちをお願いできる?」
    「了解、いくらでも持ってやるよ!」
    「ふふ、期待してるね」

    そう言って歩き出そうとするダイキの手をそっと握る。
    「あ…」
    「へへっ、兄弟っぽいだろ?」
    ニコニコと無邪気に笑う兄を見つめ、ダイキも微笑む。
    「うん、たまには良いね」


    竜人と人間、一見不思議な組み合わせに見えるが、2人、いや、6人の兄弟の間には、本人達だけが感じれる確かな絆が存在している。

    (この手はずっと、永遠に離さないからな)
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