翠雨に紛れた悩み事 しとしと傘を突く水の音、見上げれば鈍い灰色に染まる空が広がっている。
とある雨の日、八重龍之介が道を先導し、その後ろを皇煌士が付いていく。足元の水たまりに波紋を作りながら、二人はゆっくり歩を進めていた。
雨の降る中、なぜこうやって外に出かけているのかというと、きっかけは
「せっかくだしこの時期にしか見られないものを見に行かないか」
という龍之介の誘いだった。
というのも、ダイキは住民からの依頼のため席を外しており、春鈴は暇だからと神社で昼寝を始めたため、二人して時間を持て余していた。そのため、せっかく来てもらったのにもてなしも何もないのは流石に失礼だと思い、龍之介は煌士に出かけの提案をしたのだ。
煌士自身も何かしたいと思っていたため、その提案に賛成し、そして今に至るわけだ。だが結構な距離を歩いてきたため、出かけ始めよりも若干テンションが下がってはいた
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