時期が過ぎた桜の季節のかずへ【その共鳴は心地良く】
楓原万葉という男は、出会って以来本当にかけがいのない、無二の存在だと思っている。きっとこれからの人生においても、彼以上に気の合う相手には出会えまい、そう思うくらいには気心も知れて、隣にいるのが心地良い存在だ。
自分にとっての彼が何だと聞かれたら、友人、親友、相棒と、近しい存在である事を伝えると思う。でも最近ふと思うのだ、そんな関係をより上回るこの感情を、何と表現すれば良いのかと。
「今日も賑わっているでござるな」
「花見の時期は短いからね、天気が良いならなおさらだよ」
季節は春、稲妻の誇る桜が一斉に開花する時期がやってきた。あちこちに咲き乱れる桃色の花弁は毎年目にしているにも関わらず、思わず目を奪われる美しさだ。桜が咲く時期は非常に短く、それがまた良いのだと万葉は言うが、とにかくこの時期は花見の客が城下町にも溢れ返る。今年はまた鎖国が解かれたばかりという事もあり、他国からの観光客も増えたせいで連日花見スポットは人でごった返していた。そうなると現れるのが、性質の悪い連中である。
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