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    ダリア君とウェンティと匂わせるだけの先生。

    可愛いこちゃん いつの頃からは分からないが、ここモンド城の酒場にはちょいちょい可愛い子達が訪れるようになっていた。最初の頃は両者ともにショタ……いやまだ少年のような見かけに、酒を出して良いものか迷ったものだが、見かけにそぐわぬ酒豪だと言う事はすぐに知れ渡り、あっという間に二人セットで名物の常連となっていた。
     一人は西風教会の助祭であるダリア君と、もう一人はモンド城で最も愛される吟遊詩人のウェンティ君。二人ともモンド城では有名人だし、何よりそう、二人揃って仲睦まじく話している様が。
    『かっっっっっわ……!!』
     本日も友人達との女子会に、癒やしの風が吹き抜ける。少し離れたテーブルで楽しげにお酒を飲んでいる美少年二人が、仕事で疲れた女子の心をどれだけ癒やしてくれている事か。思わず口から限界まで溜めた『可愛い!!』の感情がまろびでてしまっても仕方ないというものだ。
     ジョッキを握りしめたまま暫し可愛いの激情が収まるのを待っているうちに、週末故に人の多い店内の別の女子グループから、綺麗なお姉さんがボトルを1本二人のテーブルに景気良く捧げるのが見えた。
     そして発動する局地的インパクト。

    「えー、良いのかい? ありがとうお姉さん」
    「このお酒とても美味しいですよね。ありがとうございますお姉さん」

     店内にいる全ての『お姉さん』が、顔を覆って天を仰ぐ様が見えた気がした。無論概念だが。
    「やばい……」
    「美少年から発せられるお姉さん呼びから得られる栄養素……!」
     分かる、なんだこの幸福感。あの笑顔でお姉さんと呼んで貰うためなら、お姉さん達はガロン単位で酒を捧げるのも厭わない。
     そう、最近酒場に飲みに来る楽しみの一つは、可愛い少年コンビに癒やしを与えて貰うためでもあるのだ。
     多分それは自分達だけではないと思う。よくよく観察してみると、二人をチラチラ見る者たちが多いし、大体が満たされた笑みを浮かべているのだから。
     エンジェルズシェアで飲んでいる事が多いが、出会えるのは確率だ。今日この場に居合わせた幸せを、噛み締めずにはいられない。
     だが、無論中にはそうではない者達もいる。これ迄にも何度か目にしてきたから分かるのだ。可愛らしい少年が二人酒場で飲んでいれば、絡んでくるようなしょうもない大人はどこにでもいる。
     ダリア君と一緒に飲んでいる時のウェンティ君は、普段一人で飲む時より少しだけ箍が外れがちになる。誰かが隣にいる安心感から、泥酔しても大丈夫、と思ってしまうのかもしれない。そして今日も例に漏れず、奢られたお酒をほぼ一人で飲み尽くしたウェンティ君は、次から次へとハイペースで飲んでいた為、現在眠そうにゆらゆらと頭を揺らしていた。そんな彼をニヤニヤと眺めている余所者がいる事に、気づいている者は気付いているだろう。何かあった無論止めるつもりはあるが、今日はダリア君が隣にいる。それがどれだけ安心かと言われれば。
    「お兄ちゃん随分眠そうだねぇ? 良かったらすぐ側に宿を取ってあるんだけど休んでくかい?」
     満を持して声をかけてきた男が、明らかに欲の篭った目をウェンティ君に向ける。今すぐ立ち上がって目潰しを食らわせたい気分だが、そんな無粋な横やりを入れる必要はない。何故なら。
    「お気遣い感謝します、ですが」
     ふっとダリア君の表情が一瞬で切り替わる。親友に向けていた可愛らしい笑顔から、どこか不敵なイケメンの笑顔へ。
     すっと伸ばされた腕が、ごく自然にゆらゆらと揺れていたウェンティ君の頭へと。そのまま自分の方へそっと頭を引き寄せると、己の肩にもたれ掛からせぽんぽんと頭を撫でたりするものだから。

    「私の親友をそういった目で見るのはやめて貰えます?」

     トドメを刺された女子達の、黄色い悲鳴を抑える事は流石に出来なかったのだ。
     静かな威圧と店内に上がる黄色い悲鳴に、声をかけた男がすごすごと逃げて行く。やれやれとばかりにグラスに残ったお酒を一気に飲み干すと、ダリア君は手際よく会計を済ませて立ち上がり。
    「お騒がせしてすみません、皆さんに風神様のご加護がありますように」
     あの、ちょっと、君達ほんと、お姉さん達をどうしたいの?
     ほぼ寝落ち状態のウェンティ君を、軽々とお姫様抱っこするダリア君意外と頼もしいのね。あまりにも尊いかつ神々しさすら覚える光景に、皆が息すら止めそうな中。
     隣を通って店を出て行くダリア君達の、微かな会話が確かに耳に届いたのだ。

    「本当は彼の方が良いでしょうけど、我慢して下さいね。ウェンティが潰れるのが悪いんですよ」
    「うう……じいさんには内緒にしといてよぉ……」
    「安心して下さい、すぐ迎えに来てもらいますから」
    「絶対怒られるぅ……」

     彼?とは一体何者なのか。そんな事は外野でしかない自分にはわからないけれど。
     取り敢えず今日も良い物を見せて頂き、風神様に感謝の祈りを捧げる事にしたのだった。


    【終】
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