待ち合わせ場所にした駅前は、ハロウィンということもあり仮装した人々で埋まっていた。
その中で一人、場違いなスーツ姿で周辺を見回しているのは降谷だ。
「降谷さん!」
よく知った声で呼ばれて、声の方へ顔を向けると黒いマントを羽織った新一がこちらに手を振っている。
「うーん。僕も仮装した方がよかったかなぁ」
「まあ。スーツ姿の仮装ってことでいいんじゃない」
「それで、君は吸血鬼かい」
警察という組織の中で激務をこなし、今でこそ第一線から退いたとはいえ降谷の職務は今でも激務と呼ばれているのだ。それでも現在、新一とこうして落ち合って、新一に合わせてくれるというのはそれほどに降谷の中で、新一の存在が大きいということと考えて自惚れてもいいのだろうか。
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