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    チョコレッタ

    青い妖精さんにドはまり、ハン+スケコンビを全力推してます。勢いで二次を書き上げました。
    もしかしたら、この一作品のみになるかも?
    楽しんで頂けたら幸いです。

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    チョコレッタ

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    怖がりなスケアディを、夜に彼の家まで送り届けることになったハンディ。怖がる友人を宥めつつ、何とか恐怖心を和らげてあげようとします。
    そんな青い妖精さんのお話。

    #スマーフ
    #青い妖精

    きっと、君だからね、ねぇ、今の音は何!?」
    「今のは、風で草木が揺れた音。今夜は風があるからね。草木が揺れてるんだ」
    ハンディ・スマーフは、隣りから聞こえてきた震える声と腕を強く掴まれ、つかの間の夜空鑑賞から怖がりの友人へと視線を移した。その表情は、“やれやれ”と困り顔ながらも、友人に向けた思いやりが消えることはなかった。
    “夜に出歩くのは、さぞかし怖いんだろうな…。昼間でさえ、あの怖がり様なんだから。何とか恐怖心を和らげながら、ちゃんと家の中まで送り届けてあげないと”
    そんなことを思って、スケアディの心情を案じた。
    スケアディは、いつもとは違う村の様子に過剰に怖がり、徐々に隣りを歩く体をくっ付けてきて、今ではハンディの腕にしっかりと両腕を巻き付けてしがみ付いていた。おかげで、彼の恐怖心による体の震えが伝わってくる。
    「うううぅ…」
    スケアディの視線は、忙しなく上下左右へと動き、“何か”があるのではと恐れて警戒している。
    「大丈夫だよ、スケアディ。誰かが飛び出してくるわけじゃないよ。僕らを追いかけ回す悪い魔法使いのガーガメルも、飼い猫のアズレールも、今は眠ってる」
    不安そうに震えている手を、宥めるためにポンポンと叩く。
    「ほ、ほんとに?ほんとに何も起きない…?」
    気弱でか細い声で訊ねるスケアディに、自信たっぷりにハンディは頷いた。
    「起きないよ。保証する」
    「それなら、大丈夫だね…」
    ハンディの返事にホッとし、一瞬笑顔を見せたスケアディだったが、2人の距離が近すぎたためにスケアディの足がハンディの足につまずいて、倒れそうになった。
    「うわあっ!」
    「おっと!」
    だが、そもそもがハンディの腕にしがみ付いていたために転倒を免れる。ハンディもまた、咄嗟に友人を空いているほうの手で支えた。
    「気をつけて?大丈夫?」
    「うん…。ごめんね。ハンディ。こんな時間に付き合わせちゃって」
    「良いんだよ、スケアディ。たまには夜の散歩も良いものさ」
    未だ、しっかりとしがみ付いているスケアディの腕に目をやって、“ちょっと近すぎて歩きにくいなぁ”なんてことを困った笑顔になりながら思う。
    そこで、温かさをいっぱい含んだ優しい声で、こう提案する。
    「ねぇ、スケアディ。僕の腕にしがみ付くのは止めて、代わりに手を繋ぐのはどう?そしたら足を引っ掛けて転ばないし、歩きやすいよ」
    そう言って、ハンディは青い手をスケアディの前に差し出した。

     そもそも、なぜ夜更けに2人きりでスマーフ村を歩いているのかというと…。


     遡ること、ほんの数十分前ーー。
    「ハンディ、ちょっと良いかな!?君に頼みがあって来たんだけど!」
    パパ・スマーフに頼まれて、新たな発明品を作っていたハンディは、突然の訪問者の声に設計図を描いていた手を止めた。
    「ブレイニー?どうしたんだ、こんな時間に」
    ブレイニー・スマーフの怒り混じりの声と、珍しい夜の訪問に片眉を上げる。
    ドアを開けた瞬間にハンディの丸く青い鼻に同様の鼻が勢いよく近づけられる。驚いた彼の間近に見えたのは、相手の睨み顔だった。
    「ねぇ、ハンディ?僕の大切なメガネが割れた上に、鼻にも痣ができちゃってるの、見えるでしょ?見えるよねぇ?ーーハッキリと!」
    ブレイニーの気迫に驚いたハンディは、慌ててブレイニーを押し剥がした。
    「ちょっ、ちょっと待ってよ、ブレイニー。いきなり何なの。急に訪ねてきて大声出して。何があった?ちゃんと説明してくれなきゃ分からないよ」
    ブレイニーと適切な距離が出来て漸く分かった。彼のメガネには確かに2箇所の大きな傷があり、青い鼻にも一目瞭然な痣があった。
    「スケアディのせいだよ。パパ・スマーフに言われて研究室を片付けていたら、いつもの如く[ちょっとしたこと]で騒ぎ出して、巻き込まれて、壁に激突。僕のメガネが割れて鼻もぶつけた。この有様だ」
    メガネを外したブレイニーは、途端に覇気のない弱々しい声へと変わる。今にも泣き出しそうだ。
    青い小さな指でメガネを掴んで、しみじみと悲しそうに見つめる。
    「僕の大切なメガネが壊れちゃった…。今日はもうスケアディの怖がりに巻き込まれたくないんだ。だから頼むよ。ハンディ。君はスケアディを宥めるのも寄り添うのも得意だ。だから、彼を家まで送ってくれないかな。お願いだから」
    「そういう訳だったのか。もちろん良いともーー。…それで、スケアディは?」
    ブレイニーの後ろを見てスケアディがいないかを改めて確認するハンディの耳に、まさかの返答が聞こえてくる。
    「彼なら、パパ・スマーフの研究室にいる」
    「え?今日はパパ・スマーフが出掛けていて不在だったはずじゃ…。…ってことは…」
    「そうなんだ、スケアディは独りで研究室にいるんだよ。だって、虫の鳴き声だけでも怖がって歩けないっていうから…」
    スケアディの状況を聞いたハンディは、驚きに目を見開く。
    「Oh my Smurf!何てこった!ブレイニー、そんなに怖がって外に出られない彼を独りにするなんて!」
    「いや、だってハンディを連れてこようか?って言ったら『じゃあ待ってる』って…」
    信じられないという眼で見つめられたブレイニーは、慌ててその決断に至った経緯を説明しようとする。
    だが、ハンディは既にドアを開けてスケアディの所へと駆け出していた。
    「昼間ならまだしも、こんな夜遅くに!」
    そんな言葉を振り向きざまに残して去っていく背中を、ブレイニーは後悔と呆れ半々の思いで見送る。
    「スケアディの怖がりなんていつものことだし、それに心配するようなことなんて起きないのに。ハンディったら大げさなんだから。…でしょ?」


     スケアディ・スマーフは、100人いるスマーフの中で極度の怖がりだった。
    何にでも怯えて怖がっていて、何かあるとすぐに不安顔。ちょっとしたことにも怖がってばかりのスマーフだった。
    ーーでも、いざという時には勇気を出して仲間を助けてくれる。心優しい友人でもあった。
    「ほら」
    怖がりの裏にある、スケアディの優しさを思いつつ、ハンディは掌を差し出す。
    「ーー大丈夫だよ、スケアディ。何も怖いことは起きないさ。もしも何かがあっても、ちゃんとしっかり手を繋いでる」
    ハンディの言葉に、スケアディの表情は明かりが灯ったように明るくなった。
    「ありがとう、ハンディ」
    スケアディが手を繋ぐと、ハンディはしっかりと握り返した。
    「良いんだよ。これで君が安心できるならね」
    それからスケアディが感謝の思いを込めた瞳で見つめたまま歩き続けたため、「ちゃんと前を向いて歩いて、転ばないようにね」なんて茶目っけを持って付け足せば、「そうだね」とスケアディは笑って前を向く。その表情は、紛れもない笑顔だ。
    “ーー良かった、笑ってる”
    ハンディは友人の安心した横顔を見守りながら、自分の口角も更に上がっていくのが分かった。
    ふと夜空を見上げたハンディの瞳に、キラキラと光る星空が見えた。
    「見て、スケアディ。星が綺麗だよ」
    「うわあ、ホントだ…!」
    2人は夜空に瞬く星達に見惚れ、一旦立ち止まる。
    それからスケアディの家路に着くまで、ハンディはスケアディが怖くならないようにと楽しい話を終始語って聞かせた。

    “ーーハンディ。君が手を繋いでくれているから、今は怖くないよ”
    きっと自分の為にも話してくれているハンディを見つめて、その頼もしい存在にホッとして、スケアディは大切な友人と目があった瞬間、嬉しそうに微笑んだ。


    「ほら、着いたよ!もう大丈夫!」
    スケアディの家に着くと、ハンディはすぐには帰らずに彼の家の電気を点け、“何も怖いものはないこと”をスケアディと一緒に確かめた。
    「本当にありがとう、ハンディ!助かったよ!!もう、何てお礼を言ったら良いか…!」
    心底安心しきった表情でスケアディがハンディにお礼を伝えると、ハンディはウインクと一緒に微笑んで返した。「これくらい、どうってことないよ」そんな意味を込めて。
    でも、スケアディは言葉のみの感謝では不満なようで、珍しく食い下がった。
    「ハンディ、ここまでしてくれた君に何かお礼がしたいんだ。何か僕に出来ることない?」
    スケアディの必死な様子に思わず笑って、嬉しくなった。朗らかに笑ったハンディは、わざとらしく腕を組んで難解な申し出を捻り出す“フリ”をする。
    ーーそうするだけで、ほら。また怖がりな友人のこと。たったこれだけで、笑顔が強張って眉も困惑に下がっていく。
    ハンディはスケアディの前まで近づくと、再び下がり始めていた友人の口角を手のひらで優しく押し上げた。
    「そうだなぁ…。じゃあ、いっぱい笑って、スケアディ。それが一番嬉しいことだよ」
    「ハンディ…」
    うるうると感動の涙が溢れたかと思えば、スケアディは自ら最高の笑顔になった。
    「怖がらないように頑張る…!」
    ハンディも微笑み返すと、スケアディの肩に手を置いた。
    「その調子だよ。ーーじゃあ、また明日。スケアディ」
    「うん…!明日ねー!」
    スケアディは何回もハンディに手を振り返しながら、大切な良き理解者である友人を見送った。


     「良かった、最後もずっと笑顔になれてたし。安心して眠れるかな…」
    ハンディがスケアディの家を出て、たった何歩か歩みを進めた時だった。
    「ぎゃあああーーーッッ!!!」
    突然、スケアディの恐れ慄いた叫び声が家の中から聞こえてきた。
    「えっ!?スケアディ!?いったい何が…!!」
    足を止めて振り向いた直後、家の中から全力で走ってきたスケアディと背中がぶつかる。
    「ハンディ!!家の中にモモモ、モモモンスターがいるーーー!!!」
    ぶつかった瞬間に抱き締められて、ハンディは衝撃と共にスケアディの下敷きになった。
    スケアディの怖がりと震えが、ほんのちょっとしたキッカケで再来してしまったようだった。
    「何…!?今度は何があったの!?」
    ヒシっと抱き締められたまま、ハンディは共に倒れて背中に乗ったままのスケアディと目を合わせる。息苦しいと訴えたいところだが、今のスケアディに伝えても退いてはくれなさそうだった。
    「窓がカタカタ揺れて、変な影がカーテンに映ったんだよ…!」
    「ーーなるほど…。それはね、きっと風の音と、そして揺れた木々がカーテンに影として映っているだけだよ、スケアディ。モンスターはいないんだ。少なくとも、君の家の中にはね」
    恐怖でブルブルと震えるあまり、歯をカチカチと鳴らすスケアディの怖がりっぷりに、さすがのハンディもここに来て呆れの表情になる。
    「ーーーー……」
    だが、必死に自分の頬をハンディの頬に寄せて、しがみ付いてくる様子に。そして先ほどのスケアディの『怖がらないように頑張る…!』と言った言葉と笑顔を思い出して、ハンディはすぐに、とても温かみのある“困り笑顔”へと戻った。
    “いつだって、精一杯の君なんだね…”
    ハンディは、そっと涙目になっているスケアディの頭を撫でた。

    「ーー怖がらないで。分かったよ、スケアディ。今日は安心して眠れるまで、君の側にいるよ」


    【完】
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    maru464936

    PASTTwitterの過去つぶやきまとめ。リーゼお婆ちゃんが亡くなった時のちょっとした騒動。語り手はフィーネ似の孫だと思う
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    結論から言うと、死者は出なかった。数名、顎を砕かれたり内臓をやられたりで後遺症の残る人もいたみたいだけど、問題になることもなかった。70を超えた老人の家に銃を持って押しかけてきたのだから、正当防衛。それはそうだろう。
    それから、悲しむ間も無く、祖父と私たちは火葬施設を探した。
    私たちの住んでいる国では、土葬が一般的だけど、東の方からやってきた人たち向けの火葬施設がある。リストから、一番近いところを調べて、連絡を入れて、みんなでお婆ちゃんを連れて行って、見送った。腹立たしいことだったけど、祖母の側に座り込んだまま立てそうになかった祖父が背筋を伸ばして歩けるようになったので、そこは良かったのかもしれない。怒りというものも、時としては走り出すための原動力になるのだ。
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