ノ・ゾ・キ・ア・ナ 五条と別れ歌姫は一人、二階を探索し始めた。僕は必要無いけどね、と言いながら差し出された懐中電灯と共に。煩い、呪霊やらなんやらに関しては怖くもなんともないけれど鼠は昔から苦手だし肝試しなんかも苦手なのよ! とぶつぶつ文句を言いながらも一つ一つ部屋を探索していく。探索していくうちに昔、似たような任務を冥冥とした事を思い出した。良い感じで呪霊の結界から出られそうだったのに帳もおろさず建物を破壊し、人を瓦礫の中に落としておいてニヤニヤ助けに来たよ〜と言い放った五条の顔がとてつもなくムカついたという事も一緒に。
えいっ! やあっ! と扉を開ける度に声を出しては何も無い事に安堵した。その一瞬の気の緩みが出来るところを直すようにと冥冥に言われていたな、と最後の部屋の確認をしていた時だった。扉を開けて右側の壁にある勉強机の横に二センチ程の小さな穴があるのを見つけた。歌姫が四つ這いになるとちょうどいい高さで電気は通っていない筈なのに穴の向こうからこちらへ光が漏れてきている。
1947