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    sirokawa_ura

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    sirokawa_ura

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    Gプリ♀白雪姫だよ

    スノーホワイト①実母が無くなって半年。
    ジョットはそれはそれは涙に暮れ、今になってようやく笑顔が増えてきた。喉も通らなかった食事もやっと取れ、外に出ようという気持ちも出てきたところに、父親がとんでもない提案をしてきた。
    「新しいお母さんだぞ〜」
    一国の主とはいえあんまりではないか。
    悲しみからようやく立ち直ろうとしたらこの仕打ち。
    貴族だか大臣の娘だが知らないが、どこからか連れてきた後妻は、案の定ジョットに強く当たった。分かり切っていた事だろう。
    裏で「鏡よ鏡……」など呟いているのも知らず、彼女はなるべく継母を刺激しないように生きた。……が、そうもいかない。
    何故ならばジョットは誰よりも若く美しかったからだ。
    まだ十六歳のうら若き乙女。ふんわりとした金髪、張りのある肌。きゅっとしたくびれ。誰しも目が奪われる何の引っかかりもない細い足首。
    王の娘でもあった為、貴族の年頃の息子達は誰しも結婚したがった。
    しかし彼女自身はどこ吹く風で、父の政務を手伝っては忙しそうに毎日を過ごしていた。実母が亡くなるまでは……。
    その悲しみを埋めてあげようと更に男が群がる。手紙が山のように来る。
    継母もそれなりに美しい人であった。しかしジョットの生まれ持ったそれに強い嫉妬心を抱き、ついに一線を超えてしまうのであった……。


    ***


    「しまったな……」
    従者に置いてけぼりに(という名の置き去り)にされて数十分。
    事態を把握し始めたジョットは、周りをぐるりと見渡した。どこもかしこも木。光は僅かばかりにさしているが、夜が更けたら終わりだろう。
    継母が隣国に手紙を届けに行けと言い出した時点で怪しく思うべきだった。従者に課された命は殺害であったが出来る筈もなく、この森に泣く泣く置き去りにした。命があっただけ良いとするか……とジョットはとぼとぼ歩き出す。
    「ま、あんまり好かれてる感じしなかったしな……」
    今更継母に怒っても仕方ない。どうにかして生き抜かねばならない。
    しばらく歩いていると、小さな小屋が見えてきた。
    「ああよかった。人がいるといいけど……」
    走り寄ってみると、外には薪が積んである。期待を持ってドアを叩いたが反応はなし。
    「留守か……運がないな。…あっ」
    押してみると呆気なくそれは開いた。鍵をかけ忘れたのだろう。ジョットは申しわけないと思いつつも中に入り部屋を見渡す。
    同時に、きゅるきゅるとお腹が鳴いた。この小屋が見つかるまで歩き続けたのだ。足も痛い。
    「帰ってきたら弁償しよう」
    少しばかり拝借……、ジョットはキッチンへと向かい、食べ物が無いか探す。すると、かまどの上に鍋が置いてあるのに気付いた。まだ暖かいスープであった。きっとこの家主が作っておいたもの。それにテーブルにはパンとリンゴがカゴに入って佇んでいる。
    「少しだけ……」
    などとジョットは手を合わせたが、ぺろりと平らげてしまったのであった。


    ***


    「……?」
    家主、Gが帰ってきたのはそれから数時間後である。家に入った途端感じる違和感。まさか物取りか?と身構え、つるはしを右手に持つ。
    入口付近は異常なし。更にキッチンに向かうが、そこには空っぽの鍋とカゴしかなかった。
    「食い尽くされてる……」
    明日のパンすら無くなっており、物取りよか動物でも入り込んだかと思い始めた。
    今度は二階の寝室へと足を進める。……すぅすぅ寝息が聞こえ、つるはしを握った手を強めた……が。
    「はぁ?」
    そこには鉱夫の家には似つかわしくない美少女が眠りに付いていた。
    Gのベッドに靴を脱ぎ小足を晒して夢を見ているその姿に、体が一瞬固まってしまう。これは現実なのか。俺こそ夢を見ているのか。
    つるはしを静かに置き、近づいてまじまじ見てみると確かに人間だ。動物ではない。
    しかしなんて美しい顔だろう。まつげは髪の毛と同じ色できらきら光り、唇は紅く潤って。ほんのり桃色の頬、そして何よりも白い肌がGの心を乱していく。
    まあ簡単に言えば、こんな美しい女を見た事が無かったのである。森暮らしで炭鉱夫だ、当たり前であろう。
    たが食料を食べ尽くし寝ていい理由にはならない。思い切って彼女を揺さぶってみた。
    「おい、おい」
    「んーー……?」
    まつげが重たげに上がって行き、金色の眼が現れる。
    「あぁ、申し訳ない……」
    主人が帰ってきた事を理解したのか、眼を擦りつつも静かに起き上がった。
    「てめえ誰だよ。人んちの二日分の食料食い尽くしやがって」
    「私はジョット。すまない。森に迷い込んでしまって。お詫びをどうしたらいいか……」
    そうかジョットというのか。名前を聞いていただけで感動している場合ではないのだがとろんとした眼も可愛らしい。
    「帰り道もわかんねえのか?」
    「いや帰ってはダメなんだ。殺されると思うから……」
    「はぁ?」
    王族というのは流石に気が引けて、ジョットは継母に捨てられた事だけを告げた。すると哀れに思ったのか、Gはため息を吐きつつも手を取ってくれたのである。
    「仕方ねえな。しばらくここにいろよ」
    「ほんと?!わーいありがとう!」
    「だがタダでは置けねえからな。俺が働いてる間に、飯作りと掃除はしてくれ。あと風呂も沸かしてくれると嬉しい」
    「いいよ!やるやる!」
    かくして妙な生活が始まってしまったのであった。


    **

    Gの仕事は少しばかり離れた採掘場に行き、鉱石やら石炭やらを掘り起こして、そのままか、加工して業者に売る。これがまたいい値段で売れるので、生活にも困っておらず森で悠々自適に暮らしていたのであった。よりよい鉱石が見つかると売りはせず懐に入れ、隠し財産にもしていた。加工技術もあって宝石と呼ばれるまで研いでやってから売るとまた高い値段が付く。
    夕方ぐらいまで穴に潜り、適当に売り、家に帰ってゆっくりする……。という生活も悪くは無かったが、最近はもっと良い生活になった。
    「おかえり、G」
    「ただいま」
    満面の笑みで迎えてくれるジョット。
    しかし部屋には焦げ臭い匂い。
    「お前……」
    「ちょっと焦がしただけだ!」
    飯を作ってくれとは言ったものの、ジョットは王宮育ち。料理などした事がない。毎日のように鍋を焦がしてはGに呆れられていた。
    その他にもまともに洗濯も出来ず、風呂も沸かせない。掃除などもモノを壊したりと、「一体お前はどこで暮らして来たんだ?」と言われる事無数。
    それでも少しずつ覚えて行き、懸命に役に立とうとしていた。またその姿が健気で可愛く、許してしまうのも致し方無い事である。

    そして数ヶ月も経てば、何も出来ない過去の自分を恥じるようになる程上達していた。
    二人の関係も徐々に変化していく。
    毎夕帰ってきて、迎えてくれるジョットの額にキスをすると、頬にジョットのそれが返って来る。二人はものの見事に恋人になってしまっていた。
    「疲れただろ?汗流してきて」
    「悪い」
    土だらけの体を彼女が沸かしてくれた風呂で流す。それから洗い立ての洋服をもらって袖を通し、二人揃って食事をする。ジョットがその後風呂に入って、一つしかないベッドで寄り添って寝る。
    言わずもがな体も許し合い、もはやジョットは神様がくれた嫁なのではないかと思い始めているGであった。
    「今日もお疲れ様」
    「ん」
    まどろんでいれば、そういう空気になるのとやむなし。
    「あっ……」
    「ジョット……」
    白い肌を晒していき唇で跡を付けていく。既にいつ付けたか解らない無数のそれがあったが更に増やして行った。
    「はぅ……」
    愛に満ちた夜が今日も更けていく。


    **


    休みになれば、ジョットは大きめのバスケットを用意する。飲み物、果物、手作りのサンドイッチや焼き菓子をこれでもかと詰め、Gと手を繋いで森に出掛けた。
    少し開けた場所に来ると、持ってきた敷物を大きく広げる。そこにバスケットを置いて、二人で少し散策する。
    「ジョット」
    「わ、ありがとう、G。似合ってる?」
    「……可愛いよ」
    綺麗な花があればジョットの髪に添えてやったり、山葡萄や苺を摘む。それを食べさせ合っては笑い、疲れたら戻って敷物の上で横になる。じゃれ合って不意に顔が近づいたらキスをして……。
    それにくすくす笑っていれば昼になり、持ってきたバスケットの中身を広げた。
    「だいぶ持ってきたな」
    「うん。あれもこれもって思ってたらこんなになっちゃった」
    お腹いっぱい食べて、お茶を飲んで、一息着いたらまたごろりと二人で横になる。うとうとしてくるとGは腕を貸してくれ、お返しにまたキスをする。
    まるで世界には自分達しかいないような時間を過ごして、家に戻っていく。
    幸せだった。
    Gにとってはこれ以上無いほどに。
    突然現れ、暮らすのを許したもののここまで愛してしまうとは思わなかったのだ。


    **
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