《 偏愛 》「ジェイド先輩が泊まりに来てる日は、なんだか安心して眠りが深くなっちゃうみたいなの。」
そんな惚気にあてられてうんざりした顔をしたのは、エースだったかデュースだったか。
◇
深夜二時。監督生がむくりと身を起こす。
"ジェイド先輩が泊まりに来てる日"なのに、目が覚めちゃった。寝起きで靄がかかったような頭をゆるりと振ると、しんと静まり返った部屋の中、すうすうと規則的な寝息が響く。
左隣に顔を向ければ、月明かりの中、ジェイドが無防備な姿を晒している。僅かに上下する胸、時折ぴくりと震える[[rb:瞼 > まぶた]]。そこにあるのは命の気配。
──今なら、この人を殺せるかしら。
唐突に、しかしはっきりと。何故そんな思考に陥ったのか、夜の闇に[[rb:唆 > そそのか]]されたとしか思えない。そっと首筋に手を掛ければ血管がドクドクと脈打つのを感じる。
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