てんごく 終末が訪れた。
おぞましい異形たちはエルピスにも現れ、人々は混乱に陥っている。そしてその手はパンデモニウムにまで近づいていることをエリクトニオスは気づいていた。ときどき駆け込んでくる人たちの訴えを聞くたびに、ある友人がしたであろう様を真似てパンデモニウムを飛び出しそうになったが、自分はここの獄卒である。ここを守ることが使命であれば飛び出すことなどできない。ここを離れ危険な生命までもが世に放たれてしまえば終末を加速させるだけである。
だから、エリクトニオスは探した。エルピスに、パンデモニウムに危機が迫っているのであれば、あの友人なら駆けつけてくれるのではないかと。ラハブレアもエリディブスも、ときどき声は届けてくれるものの、より広い星を守らなければならない彼らはパンデモニウムに現れないことはわかっている。それが彼らの使命だ。
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