明日また会えますようにと祈る「あ、雪ちゃん」
「あら、駆さん。こんにちは」
思いがけない、けれど少し期待していた想い人との遭遇に、驚きとともに胸が高鳴る。
「こんにちは。黒年少と花年長が撮影被るのって珍しいよね。俺、スタジオ着いてから知ってびっくりしちゃったよ」
「私たちもです。いつも年長同士、年少同士で一緒になることがほとんどですものね。――恋さんは、今メイク中ですか?」
内心の喜びと照れと緊張を顔に出さないように。想い人にこの気持ちを悟られないように。にこやかな笑みを浮かべ、当たり障りない会話を交わす。
「うん、絶賛メイク中。恋も、雪ちゃんたちとスタジオ一緒って知ってからずっとソワソワしてたよ」
「愛も『お兄ちゃんと会えるかな?』って、そればっかり。今日のヘアメイクは少し凝ったものだから時間がかかっているみたいで、まだかまだかとソワソワしているようでした」
自分たちの相方兄妹は相も変わらず仲がいい、と顔を見合わせ笑い合う。
「そういえば……雪ちゃんたちも明日まで撮影なのかな?」
「はい、二日連続で……駆さんたちもですか?」
「そうなんだよ。――明日も会えたらいいね」
「ええ、本当に」
「……じゃあ、俺、そろそろ控え室に戻るね。恋のメイクも終わる頃だと思うし」
「私もそろそろ戻ります。お互い、撮影頑張りましょうね」
「もちろん! 頑張ろう!」
想い人と手を振り合い、仕事に向けて歩きだす。ほんの小さな約束が叶うように、ほんの小さな祈りを胸に抱きながら。
(明日も、雪ちゃんと会えますように――)
(明日も、駆さんと会えますように――)