終わり良ければすべて良し「なあなありゅーじ」
「何だよ」
「あの二人、何かあったと思わへん?」
種ヶ島の視線の先には、君島と遠野の背中が並んでいた。
「何かって、何だし」
「見てみぃ、あの雰囲気。なんちゅーか、ピンクピンクしとるやん」
「……あー」
また何を言い出すのかと嘆息した大曲は、二人を見やって思わず眉を顰めた。種ヶ島の言わんとしていることは、わからないでもない。現に君島が遠野の隣にぴったりと寄り添い、腰に手まで回している。
「確かにあれは、なんつーか、マズいな」
「やろ?絶対昨日何かあったな」
「昨日って、代表決定戦の後かよ?」
「……まあ、俺らもまだ若いし?」
「何言ってんだし」
ニヤリと笑う種ヶ島に、大曲は再びため息をついた。それでも、あの二人からは目が離せない。遠野も遠野で特段君島を咎めることもなく、普通に話をしているようだ。それどころか、時折君島の顔を覗き込むようにしては嬉しそうにしている。いつになく上機嫌に見えるその周りには、花でも飛んでいるかのようだった。
「ま、雨降って地固まるやないけど、良かったなあ」
「……まあな」
二人の関係が良いものになったのであれば、何も口出しすることはない。今までとは百八十度違う空気には少々面食らうが、このメンバーと共にいられるのも、帰国までの残すところあと僅かなのだ。
種ヶ島にポンと肩を叩かれて、大曲は小さく頷いた。決戦の朝、メルボルンの太陽は眩しい。
End.